2014年3月の読書メーター

「一瞬の風になれ」は本当に良かったですね。他にも「RDG」の完結や期待を裏切らない「神様のカルテ3」、「あの花」も泣きました。「さよならドビュッシー」も面白かった。

2014年3月の読書メーター
読んだ本の数:15冊
読んだページ数:5442ページ
ナイス数:812ナイス

狐笛のかなた (新潮文庫)狐笛のかなた (新潮文庫)感想
これぞ上橋ワールドと言うべき美しい世界観が随所に散りばめられています。人の声が聞こえる<聞き耳>の能力を今は亡き母から受け継いだ小夜。森の奥の屋敷に閉じ込められた謎の少年小春丸。主に囚われ命じられるままに生きる霊狐の野火。大人達の醜い争いと古からの呪いが交錯する時、少年少々たちの一途で真っ直ぐな想いがどのような決断を下し未来を選択するのか。幼い頃に助けられた小夜をいつまでも優しく見守り自らを犠牲にしてまで助けようとする野火の想いが、上橋さんの描き出す古い日本の原風景のような描写と共にとても美しく心に残る。
読了日:3月25日 著者:上橋菜穂子
さよならドビュッシー (宝島社文庫)さよならドビュッシー (宝島社文庫)感想
読み始めから迫ってくるような勢いを感じる。いずれもピアニストを目指す、地元の名家に生まれ育った香月遥と、スマトラ沖地震で両親を亡くした片桐ルシアの従姉妹同士。突然の火事で家主である祖父と従姉妹のルシアを失い、遺産相続を巡る疑惑のなか更に母まで転落事故により亡くなる。それでも遥は天才ピアニストの岬洋介の助けと必死のリハビリの末、コンクールの出場を目指す。まさに旋律が物語を紡ぎ出すかのような演奏シーンは圧巻。ラストの大どんでん返しもなかなか。現実にこれほどの大火傷から回復できるのかは疑問ですがとにかく面白い。
読了日:3月25日 著者:中山七里
カササギたちの四季 (光文社文庫)カササギたちの四季 (光文社文庫)感想
「君を笑わせるために僕は謎を解こう。」という帯のコピーと米澤さん解説ということで衝動買い。道尾さんらしいドロドロとした展開は殆ど無く、万年赤字続きのリサイクルショップを経営する、名探偵気取りの華沙々木と実は影で支える日暮、そこに入り浸っている中学生のナミの3人+住職が織りなす四季折々の季節感が印象的な謎解きもの。第二章の-夏-蜩の川で、日暮さんが平凡を嘆く早知子さんに人生を曲がりくねった川に擬えて言った「曲がりくねることは大事なことです」との言葉の優しさが印象に残った。あと、実はナミは全部お見通し?
読了日:3月24日 著者:道尾秀介
仇敵 (講談社文庫)仇敵 (講談社文庫)感想
東都首都銀行の企画部次長というエリートバンカーだった恋窪商太郎が、ある陰謀から罪を着せられて退職し今は東都南銀行の庶務行員を勤めているという主人公のスタンスが面白い。最初は融資係の若手の松木君を影から助ける銀行世直し物的な話かと思いきや、徐々に恋窪さんを陥れたかつての仇敵との避けることのできない闘いへと舞台を移して行く。しかしながら、登場人物の死や渦巻く怨念、さんざん煽られた敵対心に対して、あまりにも最後があっさりとし過ぎていてカタルシスを得られない結末となっており、やや素材を活かし切れていない感じ。
読了日:3月23日 著者:池井戸潤
魔女の宅急便 (角川文庫)魔女の宅急便 (角川文庫)感想
これまで何度見たことか覚えていない、あのジブリの名作アニメ映画の原作。やはり登場人物や設定が頭に染み込んでいるせいかすんなりと世界観が入ってきて、サラッと読むことができます。キキとジジの旅立ちからコリコの町での生活を経て一年後に母コキリさんと父オキノさんの元へ里帰りするまでを描きます。映画と違って、力が弱くなったり大事件が発生したりとかではなく、割と淡々と各エピソードが進んでいく感じですが、落ち込んだり励まされたりしながら、トンボやミミと仲良くなったり、成長していく姿が微笑ましい。文庫の表紙絵も素敵です。
読了日:3月22日 著者:角野栄子
福家警部補の再訪 (創元推理文庫)福家警部補の再訪 (創元推理文庫)感想
今回の犯人役は、警備会社の社長に売れっ子脚本家、かつての人気漫才師に玩具造形家とバラエティに富んだラインナップ。福家警部補のとぼけた登場と冴えた推理は相変わらず。古い映画と客席演芸をこよなく愛し、さらにヒーローものとフィギュアにも造形が深いこの福家警部補の人となりもなかなか底が見えません。愛想なしに見えて警戒する人にたやすく取りいる術も持ち合わせている。あとは、今のところやや犯人と福家警部補の力の差が歴然としている感が否めないので、長編若しくは印象に残る名犯人の登場が待ち望まれるところでしょうか。
読了日:3月22日 著者:大倉崇裕
フリーター、家を買う。 (幻冬舎文庫)フリーター、家を買う。 (幻冬舎文庫)感想
二宮君主演のドラマは見ていませんので、あまり予備知識なく読み始めましたが、主人公である誠治のダメダメっぷりはともかくとして、無神経で人のことを気遣うことができない父親に、家庭や近所のトラブルから精神に重い病を抱えてしまった母親といった、思いのほかヘヴィーな設定で始まりました。自堕落な生活から一念発起して就職しようとした誠治の前に大きな壁が立ちふさがるなか、キツイ工事現場の仕事仲間のおっちゃんたちの言葉がとてもやさしく響きます。誠実であろうとすれば必ず救うものがある。そういう希望を感じさせる物語でした。
読了日:3月21日 著者:有川浩
神様のカルテ 3 (小学館文庫)神様のカルテ 3 (小学館文庫)感想
決して期待を裏切ることのない本シリーズの第三弾。松本平の風景や天神まつりの煌びやかさ、信州の湯屋の静かな佇まい、それら全ての描写が美しく、それぞれの登場人物の地に足の付いた真摯な生き様とともに胸を打ちます。新たに内科に着任した小幡先生の苛烈なまでの覚悟に満ちた医者としてのあり方との衝突を通じて、大学病院へ行くことを決意したイチさんが本庄病院へ帰ってくる日を古狐先生と一緒に楽しみに待ちたいと思います。それにしても、相変わらず最強の細君のハルさんを前にしてもなお、東西主任があまりにもいい女過ぎて辛い(≧∇≦)
読了日:3月17日 著者:夏川草介
一瞬の風になれ 第三部 -ドン- (講談社文庫)一瞬の風になれ 第三部 -ドン- (講談社文庫)感想
本当にどいつもこいつも一生懸命で、けれどもやっぱり勝負の世界は必ずしも報われるとは限らなくて、勝ち抜いた者はそんな想いを背負ってまた頑張って、そんな自分のやるべきことに真摯に全力で立ち向かう春校陸上部のみんなが最高でした。特にネギの気持ちと夢を全力で受け止める連と新二が格好良くて、鍵山と桃内も頑張って本当に最高の4継でした。レースを重ねるうちに次第に成長していく新二の姿と共にとてつもなく熱いエネルギーと爽やかさを感じさせる3冊で、特にこの三冊目は最初から最後まで涙が溢れて止まりませんでした。感無量です。
読了日:3月15日 著者:佐藤多佳子
一瞬の風になれ 第二部 -ヨウイ- (講談社文庫)一瞬の風になれ 第二部 -ヨウイ- (講談社文庫)感想
それぞれの大会の経過や結果の描写は案外あっさりしているんだけれども、そこに至るまでの新二の気持ちがとても生々しくて、段々と新二の気持ちに同化していくような感覚を味わう。守屋先輩の引退とか、そのために4継を怪我を押してでも走ろうとする連の気持ちとか、レースに負けた時の新二の悔しさとか、顧問のみっちゃんの選手としての過去や監督としての想いとか、もうなんだかいちいち泣けてくるんだよね。そして谷口若菜との距離感が絶妙でこっちまで照れくさいけどそれがいい。それでも第5章の出来事はショックが大きすぎて言葉にならない。
読了日:3月11日 著者:佐藤多佳子
終物語 中 (講談社BOX)終物語 中 (講談社BOX)感想
これまで若干不遇のヒロイン的扱いだったが、ここからはこの神原駿河のターン!と言わんばかりにエロパートからシリアスパートまで縦横無尽の活躍を見せる。本来は「まよいキョンシー」「しのぶタイム」に続く3部作だったという「しのぶメイル」。猫(白)との関連も重要。初めての気持ちも-二番手の気持ちもよくわかっている神原の苛烈なまでの想いが忍野忍をも凌駕する。そして絶対的な絆なんて無いが故に努力することを知っている戦場ヶ原や羽川達に特別だと思われている阿良々木君だからこそ、初代の眷属との決闘に一人で臨むのだろう。
読了日:3月10日 著者:西尾維新
RDG6 レッドデータガール 星降る夜に願うこと (角川文庫)RDG6 レッドデータガール 星降る夜に願うこと (角川文庫)感想
ついに泉水子や深行、宗田兄弟、高柳一条たちの世界遺産=学園トップを巡っての物語に一つの区切りを迎える時がやってきました。思えば、泉水子は成長したものだと感慨深いものがあります。そして、修験道陰陽道、忍者など日本古来の歴史あるそれぞれの陣営が立場を超えて共に手を取り合い、次の世代へ繋げて行く未来への希望を感じさせる終わりでした。より良い未来を築くために、姫神だけでなく全ての人々の脈々と受け継がれてきた切なる願いを受け止めた泉水子と深行たちにこの後どんな物語が続いて行くのか、読者の想像も膨らむばかりです。
読了日:3月9日 著者:荻原規子
福家警部補の挨拶 (創元推理文庫)福家警部補の挨拶 (創元推理文庫)感想
刑事コロンボをこよなく愛する著者によるまさに本歌取りとも言うべき倒叙ミステリ。今ドラマも放送されていますが、こちらは檀れいさん演じる福家警部補のイメージが随分違う気がします。四つのエピソードから構成されますがいずれの犯人も、小柄で童顔、毎回バッジを忘れて現場に入れてもらえないけれども、冷静沈着かつチート過ぎ?に冴え渡る推理、さらにお酒にも滅法強くて無類の映画好きという稀有なキャラの福家警部補の前では最後には自白せざるを得ません。ちょっと各犯人が語るに落ち過ぎな気もしますが他のシリーズも読んでみたい。
読了日:3月8日 著者:大倉崇裕
犬はどこだ (創元推理文庫)犬はどこだ (創元推理文庫)感想
この作品はお得意の学園もの青春ミステリではなく、東京での仕事に挫折し地元へ帰ってきた紺屋長一郎が開業した<紺屋S&R>を舞台にした、私立探偵小説。探偵とはいっても犬捜しを専門にした調査事務所なのだが、飛び込んでくる依頼は失踪した人探しや古文書の謎の解明など筋違いのものばかり。探偵志望の後輩、ハンペーとの迷コンビが追うこの二つの事件がいつしか一つに絡み合って重要な真実が明らかになっていくのですが、ラストは意外な結末を迎えます。同じ敗残兵同士の気持ちが交錯する瞬間は緊張感に溢れていました。人の気持ちは怖い。
読了日:3月6日 著者:米澤穂信
あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。(下) (文庫ダ・ヴィンチ)あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。(下) (文庫ダ・ヴィンチ)感想
やっぱり超平和バスターズは最強。アニメ版に比べて、エピソードの順番や場所が変わっていたり取捨があったりしますが、特に小説版ならではの交換日記のページが残り少なくなっていくにつれてのラストに向けた盛り上がりは期待通り。そして、めんまが残したみんなへのお別れのメッセージで完全に涙腺は決壊し、涙なしにめんまとお別れすることは出来ません。花火の扱いとか、めんまの家族の描き方とかアニメ版と大幅に異なる部分もありますがこれはこれで有りかと。もう一回アニメと映画を見たくなりました。
読了日:3月2日 著者:岡田麿里

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