2014年7月の読書メーター

2014年7月の読書メーター

月の前半が全く本を読めませんでしたが、後半は少しまとめて読めました。少ない割にはラノベも含めバラエティに富んだ内容になったのではないでしょうか。

読んだ本の数:8冊
読んだページ数:2806ページ
ナイス数:493ナイス

生存者ゼロ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)生存者ゼロ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)感想
北海道沖の原油採掘基地で起きた職員全員の無残な死体の発見を皮切りに、北海道各地で発生する原因不明のパンデミックと思しき惨劇により次々と町が壊滅していく。命を賭して未知の恐怖に立ち向かう廻田たち自衛隊の壮絶さ、妻子を亡くし次第に正気を失っていく富樫博士、そして危機に際して余りにも無能な政府首脳たち。正体不明の恐怖による前半のあおりが緊迫感あるだけに、後半の弓削博士が登場してからの原因解明と終息に至るまでの失速感がちょっと残念。パウロの預言や神の啓示などの要素も読者としてはやや消化不良感が否めない。
読了日:7月29日 著者:安生正
シャイロックの子供たち (文春文庫)シャイロックの子供たち (文春文庫)感想
東京第一銀行のとある支店を舞台に、支店長をはじめ副支店長、業務部、融資部、業務部など、銀行という一つの世界に囚われた様々な部署と役職の人々が複雑に入り組んで輻輳し、さらに途中からはミステリの様相まで呈する連作短編集。個人の想いや家族の都合より組織の論理が優先する世界における悲哀や焦燥感が悲しいほど的確に描写されており、特に子供のいる人にとっては辛い内容で爽快感とは程遠いが、働く上で大切にすべきもの、守らなければならないものは何か、あなたは誇りを失わず矜恃を持ち続けられるのかと問いかけられているかのよう。
読了日:7月29日 著者:池井戸潤
僕が七不思議になったわけ (メディアワークス文庫)僕が七不思議になったわけ (メディアワークス文庫)感想
第20回電撃大賞金賞作品。突然、桜の精霊のテンコによって学校の新しい七不思議に選ばれた中崎君がトイレの花子さんや何でも見通す赤い目を持つアカメたちの力を借りながら学園で起こる事件を解決するミステリアスファンタジー。正直言って台詞回しや文章構成は拙さを感じますが、章ごとの一人称の変化、朝倉さん姉妹との関わり、姉の形見のイヤリングの伏線に加え、ラストの真実の種明かしに至る展開はなかなかの仕掛け。うん、まぁ、帯の時雨沢さんと同じく、見事に騙されましたね。
読了日:7月26日 著者:小川晴央
新装版 不祥事 (講談社文庫)新装版 不祥事 (講談社文庫)感想
ドラマの原作本。池井戸さんには珍しく?女性が主人公の物語ですが、花咲舞のキャラがとにかく痛快で、どんな相手にも怯むことなく正論をぶつけ、啖呵を切る、時には手も足も出るとまさに銀行という巨大な組織の闇を相手にやりたい放題やってくれます。8話の短編から構成されていますが、連作として繋がっているので長編的な楽しみもあります。花咲、相馬コンビと相対する真藤、児玉一派も決して絶対的な悪役として描かれている訳ではなく、ラスト付近の現実的な落としどころも池井戸さんらしい展開。もっと”狂咲”の活躍が見てみたくなりますね。
読了日:7月24日 著者:池井戸潤
よろず占い処 陰陽屋へようこそ (ポプラ文庫ピュアフル)よろず占い処 陰陽屋へようこそ (ポプラ文庫ピュアフル)感想
素性不詳の長髪イケメンインチキ?陰陽屋の安倍祥明(後に出自とそれを隠す理由は明かされる)と、稲荷神社に捨てられていた過去と狐耳の持ち主で中学生の妖狐(本人は隠しているつもりだが実は隠せていない)、瞬太がささやかな日常の謎を解決する心温まるストーリー。いかにも受けを狙いすぎな設定にちょっと辟易しつつも、毒舌ながら最後は親身になる祥明と瞬太の愛らしいキャラのコンビによる敢えて詰めの甘い謎解きに、真実を追求し切らない優しさを感じる。しかし、祥明の母のキャラとエピソードは許容範囲を越えててちょっと笑い飛ばせない。
読了日:7月22日 著者:天野頌子
もういちど生まれる (幻冬舎文庫)もういちど生まれる (幻冬舎文庫)感想
短編集だと思いながら読んでいたら、主人公や登場人物たちの視点が入れ替わりながら輻輳的に進んでいく連作短編集でした。19歳から20歳という人生における大切な一瞬を刹那的に切り取ったかのような作品群はいかにも朝井さんらしい。「もういちど生まれる」というタイトルの意味とは?「破りたかったものすべて」とは誰が何を破りたいのか?読み進めていくうちに、それぞれの登場人物たちの関係性とともに胸の内に秘められた思いが明らかになっていくにつれ、切なさは増すばかり。中でもナツとハルの兄弟のすれ違いが辛い。
読了日:7月19日 著者:朝井リョウ
世界堂書店 (文春文庫)世界堂書店 (文春文庫)感想
米澤さんが愛する、世界各国、古今東西の短編小説を集めたアンソロジー。こうした機会でもなければ、おそらくは触れることは無かったであろう外国作品の数々。米澤さんのルーツを知るようで興味深い。収められた15篇の作品は読みやすいものから一風変わったものまでバラエティに富んだ構成。個人的に面白かったのは、「東洋趣味」「昔の借りを返す話」「私はあなたと暮らしているけど、あなたはそれを知らない」「十五人の殺人者たち」あたりでしょうか。たまには、少し変わった世界に触れてみるのもいいかも。
読了日:7月18日 著者:
書店ガール 2 最強のふたり (PHP文芸文庫)書店ガール 2 最強のふたり (PHP文芸文庫)感想
ペガサス書店から吉祥寺の新興堂書店に舞台を移し、店長として転職した理子と、同じく共に働くこととした亜紀。前作のドロドロさに比べ互いに大人になった二人の関係性。そんな中、亜紀の妊娠という出来事が二人だけではなく、伸光や周りの人達を巻き込んで女性が働くことの難しさと意義を考えさせられる。担当雑誌の回収騒ぎや吉祥寺の書店を巻き込んでの50年後も残したい本のフェアを通じ、本と本屋の力を信じる理子、亜紀や伸光たち皆が一回り大きくなったようで、前向きでとても気持ちのいい読後感。田代と理子のラストは切ないの一言。
読了日:7月13日 著者:碧野圭

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