2014年8月の読書メーター

2014年8月の読書メーター
読んだ本の数:9冊
読んだページ数:3078ページ
ナイス数:508ナイス

「死神の浮力」が読めるまで待ちましたね~。あとは巻を追うごとに良くなっていく書店ガールが印象に残りました。プリズムは、百田さんが今回取り上げたのはいわゆる多重人格、解離性同一性障害でしたが、良くも悪くも一つのテーマについてとことん掘り下げて調べたことをすべて盛り込むな~という感想。

死神の浮力死神の浮力感想
待つこと10ヶ月、ようやく読むことができました。短編集だった「死神の精度」と違って今度は長編により理不尽に娘を奪われた山野辺遼と美樹夫妻との7日間を描く。サイコパスとも言うべき犯人、本城崇への復讐という重いテーマながら、相変わらず死神の千葉のズレっぷりによって「久しぶりに楽しかった」と笑う山野辺夫妻の姿に読者も救われた気分になる。最後は、まさかの還元キャンペーンによるオチに溜飲が下がる思い。そして、千葉の揺るがぬ判断とエピローグで描かれたその後の姿にホロリとさせられます。もっと千葉の活躍を続編で見たい。
読了日:8月30日 著者:伊坂幸太郎
よろず占い処 陰陽屋の恋のろい (ポプラ文庫ピュアフル)よろず占い処 陰陽屋の恋のろい (ポプラ文庫ピュアフル)感想
陰陽屋シリーズ第3弾。季節は夏になり、お決まりのような夏休み、文化祭といかにも高校生らしい行事が今回の舞台。よろず占い処である祥明のもとを訪れる依頼人は文化祭のヒロイン争い、商店街の晴れ乞い、槙原の妹夫婦の離婚調停騒ぎなど相変わらず盛況の様子。そんな中、みどりの病院の謎の入院患者の行方がわかったことや瞬太と三井さんの関係がちょっと前進したのは良かった。最後に三井さんが祥明に相談していた内容の中身など今後が気になる思わせぶりな展開も。そして、やはり祥明の母優貴子の行動力は恐ろしすぎます。
読了日:8月30日 著者:天野頌子
陰陽屋あやうし (ポプラ文庫ピュアフル)陰陽屋あやうし (ポプラ文庫ピュアフル)感想
陰陽屋シリーズ第2弾。高坂委員長や憧れの三井さん、倉橋さん達と共に運良く都立飛鳥高校に進学した瞬太。瞬太のアルバイト禁止危機や、ホスト祥明の結婚迫られ事件、三井さんのストーカー騒ぎ、瞬太の母みどりの勤める病院での幽霊騒動など、「あやうし」というタイトルほどの危機や大事件は起こらず、二作目としてはややパンチに欠けるような気はするものの、相変わらずほのぼのとして安定した内容でサクサク読める。祥明の祖父の登場による瞬太の秘密への手がかりが出てきたり、三井さんとの距離が少し縮まったり、今後の展開が楽しみです。
読了日:8月28日 著者:天野頌子
平台がおまちかね (創元推理文庫)平台がおまちかね (創元推理文庫)感想
今度の主役は書店員ではなく、出版社営業マンの井辻くん。タイトルの平台とはパチンコ台の方ではなく(古い?)書店の本棚で平積みの本が置いてある台のこと。入社間もない井辻くんの奮闘ぶりとある意味仲間とも言える同業の他社営業マン達との掛け合いも面白い。特に佐伯出版の真柴との「それで、ひつじくん」「井辻ですけど」のしつこいまでの繰り返しも終いには癖になってくる。また営業視点からみた出版業界も興味深い。中でも「絵本の神さま」は地方書店の現状と親子の想いにホロリとさせられる。ほのぼのミステリものだが読み応え充分。
読了日:8月17日 著者:大崎梢
ようこそ、わが家へ (小学館文庫)ようこそ、わが家へ (小学館文庫)感想
真面目が取り柄、小市民の代表のようなサラリーマンである倉田が、ある日駅のホームで割り込みを注意したところから、一家に対する嫌がらせが始まり、正体のわからない不安に陥れられていく。そして、会社では銀行からの出向扱いで軽んじられながら、有能な部下の摂子と共に営業部長の真瀬の不正を暴くため奔走する。二つのサスペンスが交錯するハラハラの展開が見どころ。愚直なまでに真っ直ぐに生きてきた自負に輝きを当てるラストに、誰もが自分の当たり前の日常という人生を一生懸命に生きていることへの著者からのエールが感じられる。
読了日:8月17日 著者:池井戸潤
プリズム (幻冬舎文庫)プリズム (幻冬舎文庫)感想
「プリズム」とは、一つに見える光の中の様々な波長の光を屈折させる多面体のこと、そしてまた人の内面も同じようなものかもしれない。解離性同一性障害をテーマにした本作では、いわゆる多重人格といわれる症状を持つ「実は存在しない男」と家庭を持つ聡子との悲しい恋愛を描く。百田さんらしく一つのテーマに絞って調べ上げた様々な要素をすべて盛り込んで一つの作品に仕上げている点は相変わらずだが、割と進藤先生や聡子の夫の康弘を使った説明は上手くいっている感じ。展開はやや強引ながら、こんな物語の描き方もあるのかと感心。
読了日:8月17日 著者:百田尚樹
オーダーは探偵に 砂糖とミルクとスプーン一杯の謎解きを (メディアワークス文庫)オーダーは探偵に 砂糖とミルクとスプーン一杯の謎解きを (メディアワークス文庫)感想
就活に励むドジっ子天然の女子大生の美久、スマートで親切な人の良い喫茶店のマスターの真紘、そして毒舌ドSの美形王子キャラの悠貴。謎を解くと知られる喫茶店エメラルドに持ち込まれる依頼をドS探偵が解き明かす。何だかいかにもな設定のオンパレードです。出だしは悠貴のキャラに不安一杯でしたが、三話〜四話の謎解きは爽快で、「内舘、走れ」のたった二言の短い言葉が非常に印象的でした。それから、ラストの「これは炭酸だ」もシャレが効いていてスッキリとしたサイダーのように自然と笑顔が弾けるような気持ちのいい話でした。
読了日:8月15日 著者:近江泉美
配達あかずきん―成風堂書店事件メモ (創元推理文庫)配達あかずきん―成風堂書店事件メモ (創元推理文庫)感想
思いがけず書店ものが続きました。駅ビルにある書店、成風堂を舞台に、書店員の杏子とアルバイトの多恵が、お客が巻き起こす本にまつわる謎を解き明かしていく六つの短編からなる書店ミステリ。ちょっと謎解きに巻き込まれる導入部分の強引さ(そんなに気軽に書店員に話しかけます?)や多恵の勘の冴えがチート気味なところが気になるところですが、「標目にて君が袖振る」や「六冊目のメッセージ」などのラブストーリーがほっこりしていい感じ。有名な作品の題名も多数出てきて、本好き、本屋好きには堪らない感じです。
読了日:8月15日 著者:大崎梢
書店ガール 3 (PHP文芸文庫)書店ガール 3 (PHP文芸文庫)感想
東北を含む東日本エリア長を任されることになった理子と、育休から復帰し新たに経済書の担当になった亜紀。理子は傘下に治めることになった東北の老舗書店の櫂文堂で店長代理の沢村との関係に、亜紀は子育てと仕事の両立と本部への異動という選択にそれぞれ悩みを抱えている。このシリーズも震災という大きなテーマを取り入れることで、書店あるあるや単なるお仕事話ではなく、書店が持つ社会的な可能性や本そのものが持つ力というしっかりした軸が出来たように思う。書店員がこの仕事を愛し、情熱を持って棚を作っている様が確かに感じられる。
読了日:8月7日 著者:碧野圭

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