2015年7月の読書メーター

2015年7月の読書メーター
読んだ本の数:9冊
読んだページ数:2666ページ
ナイス数:516ナイス

いつまでもショパン (『このミス』大賞シリーズ)いつまでもショパン (『このミス』大賞シリーズ)感想
岬洋介の活躍は遂に舞台を世界に広げ、ポーランドショパンコンクールに出場する岬の前で起きる殺人事件と、ワルシャワ市民を巻き込んだ卑劣なテロ事件。コンクールの行方もさることながらと謎のテロリスト「ピアニスト」の正体とは?由緒正しきポーランドショパンの継承者であるヤンや盲目の榊場、岬、たちの演奏の描写も圧倒的で引き込まれる。テロの理不尽さに対する怒りと音楽の持つ力を再確認する。家名や伝統に縛られたヤンの成長物語でもあったが、戦場で起きたノクターンの奇跡とパキスタン大統領からのミサキ宛のメッセージには涙。
読了日:7月31日 著者:中山七里
あと少し、もう少しあと少し、もう少し感想
やっぱり駅伝はいい。ただ走るのが早いだけではなくて、チームとしてのまとまりとか襷に込められた思いとかが繋がっていく感じがいい。中学校最後の大会に臨む寄せ集めチームの桝井たち市野中の6人。いじめられっ子の設楽が、ヤンキーの大田が、お調子者のジローが、カッコつけの渡部が、後輩の俊介が、誰より走り続けてきた桝井が、気持ちを込めた襷を繋いでいく。6区で構成された章立てもとても上手い。一緒に走っているように、一人ずつに思い入れが深くなって共感していく。誰もが一生懸命で素敵です。中でも、渡部の4区が好きです。
読了日:7月26日 著者:瀬尾まいこ
くちびるに歌を (小学館文庫)くちびるに歌を (小学館文庫)感想
「手紙〜拝啓 十五の君へ〜」アンジェラ・アキさんの名曲をテーマに、五島列島にある中学校にやってきた代理音楽教師の柏木先生と、NHK合唱コンクールへの出場を目指す合唱部を描いた青春ストーリー。柏木先生が生徒たちに課題として書かせたそれぞれの登場人物たちの手紙の中に綴られた等身大の悩みや秘密が、15年後の自分に対して手紙を出すという曲のコンセプトと上手くマッチしています。新垣結衣さん主演で映画化もされたようですが、自分の中では勝手に松下奈緒さんで再生していました。ラストの合唱シーンは胸に迫るものがあります。
読了日:7月25日 著者:中田永一
スペードの3スペードの3感想
ミュージカル女優の香北つかさのファンクラブであるファミリアをまとめる美知代が中心のスペードの3。突然現れた”アキ”にはすっかり騙された。そのアキを描いたハートの2。ラストのダイヤのエースは香北つかさが主人公。舞台に立つ側と観る側、演じる側や支える側、それぞれの立場の違う3人の女性の繊細に揺れ動く心模様が朝井さんならではの描写でくっきりと痛々しい程に浮かび上がってくる。子どもの頃のキラキラした風景の中に隠された、闇の中でキラリと光る鋭利な刃物のような刺々しい気持ちまでが突きつけられているかのよう。
読了日:7月23日 著者:朝井リョウ
営繕かるかや怪異譚営繕かるかや怪異譚感想
何処からか聞こえる雨の音、古い城下町に静かに佇む旧家、舞台となる家と街並みを描写する小野さんの湿り気のある薄暗い雰囲気に満ちた文章によって、何処まで続いているのかわからない暗渠に引きずりこまれるような不安な気持ちにさせられます。いずれも住居に纏わる怪異現象の原因を営繕屋である尾端が解決していく6編の物語ですが、どの話も女性が中心なのは、女性の方が何かそういった不思議なものを感じやすいのでしょうか。言い伝えや目に見えないもの、神仏への敬意など、移ろいゆく中で、忘れてはいけないものを思い出させる素敵な物語。
読了日:7月12日 著者:小野不由美
神様のカルテ0神様のカルテ0感想
神様のカルテシリーズのエピソード0。医学部の6年生として国家試験合格を目指す一止、辰也、次郎たちの友情溢れる学生時代、本庄病院が24時間365日診療を標榜するに至る経緯、研修医として本庄病院に赴任した一止の苦悩と葛藤、ハルさんの神々しいばかりの山岳写真家として生きる姿。どの話も、後のエピソードで断片的に描かれていたものから想像していた姿を上回るほどの立体感を持ってそれぞれの登場人物たちの今へと繋がっていきます。特に医学部の良心と言われた進藤辰也はやはり男前でした。やはり、読むと優しくなれるシリーズです。
読了日:7月12日 著者:夏川草介
臨床犯罪学者・火村英生の推理    密室の研究 (角川ビーンズ文庫)臨床犯罪学者・火村英生の推理 密室の研究 (角川ビーンズ文庫)感想
臨床犯罪学者の火村英生と推理作家の有栖川有栖のコンビが挑む難事件のうち、6つの密室の謎を集めたアンソロジー。密室と一口に言っても、鍵の掛かった部屋から、一方通行の足跡によって閉じられた密閉空間までバラエティーに富んでいる。如何にもビーンズ文庫らしい男前な挿し絵が満載なのはご愛嬌かな。お気軽に楽しめます。
読了日:7月11日 著者:有栖川有栖
絶望系 (新潮文庫nex)絶望系 (新潮文庫nex)感想
ある日突然、杵築の友人建御の部屋に悪魔と天使と死神と幽霊が現れるところから始まる。そして、街で起きている連続バラバラ殺人事件と杵築の隣の家に住む謎の烏衣カミナ、ミワ姉妹。ご存知「涼宮ハルヒ」シリーズでお馴染みの著者による暗黒ミステリとの触れ込みではあるが、完全に拗らせ過ぎた神と悪魔論争や目を背けたくなる様なエログロ描写に辟易として何度本を閉じようとしたことか。ハルヒシリーズの軽快さは何処へやら。肝心の絶望系の世界観の説明も上滑りしていてイマイチピンと来ない印象で、何せ読後感が悪いことこの上ない。
読了日:7月9日 著者:谷川流
神様の御用人 (4) (メディアワークス文庫)神様の御用人 (4) (メディアワークス文庫)感想
御用人シリーズ第4弾にして初の長編。御用人代理として神様から申しつけられる数々の御用をこなしてきた良彦と黄金コンビ。今回、宣之言書に現れたのは、神代の時代に神倭伊波礼琵古命(後の神武天皇)の東征により征伐された紀之国を治める天道根命。昔の記憶を無くし、神としての存在意義に悩む天道根命の夢に現れる女性と謎の簪。御用人としての良彦の確かな成長と時代は変われども、古の神々と先祖代々の系譜によって現代に生きる人間が繋がっている確かな絆を感じさせる物語。紐解かれた謎と穂乃香のおまけ、読み応え十分の内容に満足です。
読了日:7月5日 著者:浅葉なつ

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