2015年9月の読書メーター

2015年9月の読書メーター
読んだ本の数:7冊
読んだページ数:2017ページ
ナイス数:601ナイス

書店ガール 4 (PHP文芸文庫)書店ガール 4 (PHP文芸文庫)感想
東日本エリアマネージャーとなった理子や本店のMDとなった亜紀から、新しい世代の書店ガールに主役を移したシリーズ第4作。良くも悪くも理子と亜紀無しでは成り立たないのでは?という心配は全くの杞憂でした。契約社員から正社員登用と共に店長就任の打診を受けた彩加と就活を控えて自分の進む道を見いだせずにいるアルバイトの愛奈。二人の等身大の迷いや悩みにもがきながらも前に進もうとする姿にこのシリーズに一貫して流れる仕事への取り組み姿勢や本への愛を感じます。また出番は少ないけど、時折、登場する理子や亜紀の頼もしいこと。
読了日:9月27日 著者:碧野圭
神去なあなあ夜話神去なあなあ夜話感想
横浜で生まれ育った平野勇気が神去村に来てから早や一年。勇気が慣れない林業に奮闘する姿や48年に一度の大祭を描いた前作に比べ、夜話というタイトル通り、神去村の古の神々の起源や大人の夜の恋愛事情、信心深いお稲荷さんの言い伝え、さらには清一さんやヨキの親たちに起きた悲惨な出来事など、まさに深淵な夜のお話。そして、勇気と直紀さんの恋の行方も気になるところ。林業の全盛期も衰退期も知る三郎じいさんが、今の雰囲気が一番好きと語り、希望を感じている姿が嬉しい。それにしても、勇気の一人語り口調はちょっと寒すぎるのでは?!
読了日:9月23日 著者:三浦しをん
ヴァン・ショーをあなたに (創元クライム・クラブ)ヴァン・ショーをあなたに (創元クライム・クラブ)感想
下町のフレンチレストラン、パ・マルは、三舟シェフ、料理人の志村さん、ソムリエの金子さん、そしてギャルソンの高築くんの4人で営む小さなビストロ。思わず猫に餌をやって志村さんに怒られたり、マドモアゼル・ブイヤベースとの仄かな恋心など三舟シェフの意外な一面が垣間見れる。お気に入りはブーランジェリーのメロンパン。洒落た店もいいけど、やっぱり変わらず愛され続けるパンの魅力がある。そして、物語の終盤は、語り手を高築くんから移して、三舟シェフの側面や過去を掘り下げ、さらにはあのヴァン・ショーの原点の話が登場する。
読了日:9月17日 著者:近藤史恵
タルト・タタンの夢 (創元推理文庫)タルト・タタンの夢 (創元推理文庫)感想
下町の商店街にあるフレンチレストランのビストロ・パ・マル。長髪を武士のように束ねた無口な三舟シェフに料理人の志村さん、若いソムリエの金子さんに語り手であるギャルソンの高築の4人だけの小さな店に訪れるお客にまつわる謎や不可解な出来事を無口なはずの三舟シェフが解き明かす7篇の短編集。各話のタイトルも秀逸ながら、登場する料理の美味しそうなこと!敷居が高いと思い込んでいるフレンチですが、こんな風に気軽に立ち寄れる店があるといいですね。ラストの「割り切れないチョコレート」の理由がとても優しくて素敵でした。
読了日:9月12日 著者:近藤史恵
何者 (新潮文庫)何者 (新潮文庫)感想
直木賞受賞作。これは凄い。そして怖い。他人から見えているよそ行きの自分と裏側に隠した本音の自分。それに加えてSNSでの着飾った自分。何層もの自分のどれもが自分自身の姿。いい格好をしてみたり、安全圏から傍観者を気取って批評してみたり、他人の失敗を見て安心してみたり。そんな自分を嫌悪しながらも、呪縛から逃れられないのもまた自分。就活やツイッターなどを題材としているがために今時の若者の話と受け取られてしまいがちかもしれないが、読後の居心地の悪さや気まずさこそ、本作が人の心の本質を射抜いている証に違いない。
読了日:9月12日 著者:朝井リョウ
母性 (新潮文庫)母性 (新潮文庫)感想
母、娘、おばあちゃん、義母、祖母、ママ、お母さん。女性に存在する、ある側から相対的に見た名前ではない様々な呼び名。この物語には、そうした名前のない人々が沢山登場する。もちろん、そこは作者の仕掛けどころ。ある日、自殺を図ったとみられる女子高生が自宅の中庭で発見された所から話は始まる。「愛能う限り、大切に育ててきた娘」と語る母。基本的には母の懺悔の手記と娘の回想によって進められる。さらに「母性について」という第三の視点を交錯させることによって、不安定な状態が作り出されて読み手を撹乱する。
読了日:9月10日 著者:湊かなえ
水の柩水の柩感想
小学校の卒業記念として二十年後の自分に宛てて書いた手紙を入れて校庭に埋めたタイムカプセル。同級生の女子達からいじめを受けている敦子にその手紙の入替を手伝って欲しいと頼まれた中学二年生の逸夫。旅館を営む逸夫の家に暮らす祖母の生まれ故郷であるダムに沈んだ村。誰もが心の奥底に抱える感情や思いを隠すかのように、蓑虫の如く色とりどりの蓑を纏っている。敦子やいくが忘れたかったもの、逸夫が未来に向けて乗り越えなければならなかったもの、それらを水の柩が引き受けることができたのなら、明るい希望と救いを見い出せるに違いない。
読了日:9月6日 著者:道尾秀介

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