2015年10月の読書メーター

2015年10月の読書メーター
読んだ本の数:8冊
読んだページ数:2380ページ
ナイス数:479ナイス

まぐだら屋のマリアまぐだら屋のマリア感想
老舗料亭の見習い料理人であった及川紫紋が、自らが働く料亭で起きた料理の使い回しや食品の産地偽装、そしてその告発の責任を取って自ら命を絶った後輩の悠太を救えなかったという拭いきれない罪の意識を抱えて辿り着いたのが尽果という名のバス停の傍にある「まぐだら屋」。そこで何も言わず紫紋を受け入れてくれた女主人のマリアもまた過去に取り返しのつかない罪を抱えている。決して赦されることは無いと知りながら、誰かに受け入れてもらえること、認めてもらえることで今日という日を生きていくことができる。そんな暖かさに溢れていました。
読了日:10月28日 著者:原田マハ
ヒートヒート感想
浦とともに学連選抜での箱根を走った後、名実ともに日本を代表するマラソンランナーになったが、相変わらず唯我独尊、自分の記録以外に興味が無い山城。日本人に世界記録を出させるために「東海道マラソン」の実施を画策する神奈川県知事の松尾とその実行を指示された県教育局スポーツ課の音無はいずれも過去の箱根ランナー。選手としての葛藤を抱えながらペースメーカーの役割を超えようとする甲本と、仕組まれたレースに反発しながらも甲本と競い合ううちに熱くなる山城の緊迫したレース展開。なんだかんだで浦には優しい山城が可笑しい。
読了日:10月24日 著者:堂場瞬一
時の罠 (文春文庫)時の罠 (文春文庫)感想
<時>をテーマにした、今を時めく辻村深月さん、万城目学さん、湊かなえさん、米沢穂信さんという4人の人気作家による4つの物語。偶然なのか、最初の辻村さんとラストの湊さんはいずれもタイムカプセルを題材にしたお話。それぞれ完結しているので、時間がないときでもサラッと読めて、それでいて内容は作家の個性も出ていて、深く味わいのある短編集に仕上がっています。
読了日:10月24日 著者:辻村深月,湊かなえ,米澤穂信,万城目学
サファイアサファイア感想
宝石をキーにした短編集。もちろん湊かなえさんらしく、只ならぬ後味を残す作品ばかり。そして、そんな中にもキラリと光る宝石のような希望が見いだせるラストの仕掛けが見どころ。しかし、真珠やムーンストーンなど、読者を引っ掛けようという技巧に走りすぎなことや、これでもかと暴き出される人の裏側の感情に食傷気味なこと、そして何より、表題作であるサファイアなどの一部を除けば各話に宝石が絡む必然性があまり感じられないことで、ちょっと短編集としての統一感を欠いた気がしますので、珍しく?辛目の感想になってしまいました。
読了日:10月20日 著者:湊かなえ
チームチーム感想
箱根駅伝において、唯一、自らの学校ではない襷を繋ぐ異端の存在である学連選抜を描く。奇しくも、来年正月の本戦に向けた予選会の開催日にこの本を読むというのも何かの因果かもしれない。キャプテンを任された浦のリベンジと苦悩、孤高の存在の山城、門脇の懸命な山登り、一年生の朝倉、各区でのスリリングで目を離せない展開に、まるで一緒のチームで駅伝に参加しているかのよう。寄せ集めチームである学連選抜には、様々な意見や選手達の葛藤もあるだろうが、胸の学校名や他の選手達の想いを背負って走る姿は紛れもなく読むものを熱くする。
読了日:10月18日 著者:堂場瞬一
カフーを待ちわびてカフーを待ちわびて感想
舞台である沖縄の離島、与那喜島の中休み(ナカユクイ)のように、ゆっくりと流れる空気とそこに住む人たちの柔らかな雰囲気が、原田さんの文章によってとてもよく表れていて素敵です。島の言葉で、カフー「果報」には、「いい報せ」と「幸せ」のふたつの意味がある。ウシラシ(お知らせ)を告げるまさに神人のようなおばあも神秘的。右手に障害を持つ明青が北陸の神社に残した「嫁に来ないか。幸せにします」という絵馬を頼りに明青の元に「カフー」のように会いにきた幸。誰かを待ちわびること、待ってくれている人がいる喜びをかみしめる1冊。
読了日:10月18日 著者:原田マハ
武道館武道館感想
それを見る人たちに輝きを見せ続けることが義務付けられたアイドルたち。この作品で朝井リョウがモチーフにしたのは「武道館ライブ」を目標とする女性アイドルグループの「NEXT YOU」。自らもハロオタらしい朝井さんらしく、恋愛禁止や某グループでの丸坊主騒動、ネット炎上、握手券付きのCD特典商法、握手会での傷害事件など、現代のアイドル事情がリアルに(っていうかそのまま)盛り込まれている。人気と反比例して、望み通りにはいかなくなっていくままならなさの中、描きたかった未来図は朝井さん自身の思い描く願望なのだろうか。
読了日:10月12日 著者:朝井リョウ
博多豚骨ラーメンズ (4) (メディアワークス文庫)博多豚骨ラーメンズ (4) (メディアワークス文庫)感想
殺し屋の街である博多を舞台にしたシリーズ第4弾(こう書くと博多という街に絶対誤解を生む)。前作は林ちゃんでしたが、今作の主役は表紙のとおり、凄腕ハッカーのマッシュルーム榎田くん。相変わらず、殺しや凄惨な場面はあるものの、ハッキングやネットワークを使った知略がメインの戦いがメイン。榎田の父親との過去の確執が明らかになるとともに、使用人兼殺し屋の八木の忠誠心あふれる活躍も見どころ。今回もラーメンズの仲間たちの阿吽の呼吸の連係プレーがお見事ですが、次は魅力あふれるメンバーの誰がメインを張るのか楽しみです。
読了日:10月12日 著者:木崎ちあき

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