2015年12月の読書メーター

2015年12月の読書メーター
読んだ本の数:11冊
読んだページ数:3837ページ
ナイス数:671ナイス

陽気なギャングは三つ数えろ (ノン・ノベル)陽気なギャングは三つ数えろ (ノン・ノベル)感想
陽気なギャングシリーズ第3弾。4人の変わらないテンポと楽しい会話と、時間の経過とともに少しずつ変わっているようなところも感じられる。ホテルで出くわした週刊誌記者の火尻の財布を久遠がスった事から正体に気付かれ、記事にすると脅されることに。火尻が借金を抱えるカジノグループの大桑たちや過去に火尻の記事に被害を受けた人達を交えて、裏をかき合う騙し合いが始まる。余りの火尻のゲスっぷりに、一矢報いたところで救われない人を思うと、「世の中にはいい話にも悲しい話にも思える思えるものばかりだ」との成瀬の言葉が身に染みる。
読了日:12月30日 著者:伊坂幸太郎
20 (実業之日本社文庫)20 (実業之日本社文庫)感想
5位でシーズンを終えようとしているかつての名門スターズの最終戦のマウンドを託されたのはドラフト6位の高卒ルーキー初先発の有原。回は9回表を迎え、コントロールが定まらないながらもノーヒットノーラン継続中。物語は、有原の投じる20球を、有原本人を始め、監督の樋口、コーチやチームメイトのみならず、試合を見つめるオーナーや新聞記者、選手行きつけのラーメン店主など、1球ごとに視点を変えながら進んでいく。野球ファンなら納得の掘り下げと凝縮ですが、それにしても、乱闘にボークに負傷退場にと詰め込みすぎた感は否めないかな。
読了日:12月23日 著者:堂場瞬一
凍りのくじら (講談社ノベルス)凍りのくじら (講談社ノベルス)感想
気持ちが纏まらず、上手く言葉に出来ない。藤子・F・不二雄先生をこよなく尊敬する芦沢光、理帆子親子が、ドラえもんがすべての読書の原点と言い切る気持ちはとてもよくわかります。SF(少し・不在)な高校2年生の理帆子の前に現れた別所あきら、少しずつ壊れていく前彼の若尾、末期癌で余命幾ばくもない病床の母、世界的指揮者の松永の私生児で口がきけない郁也と家政婦の多恵。ドラえもんの道具になぞらえながら物語は進んでいき、若尾によって脅かされる理帆子の世界が救われるクライマックスでミステリだったと気づかせる仕掛けが見所。
読了日:12月21日 著者:辻村深月
チームII (実業之日本社文庫)チームII (実業之日本社文庫)感想
「ヒート」で描かれなかった、山城と甲本のデッドヒートのまさかの結末からスタート。あれから7年後、突然、廃部の危機に見舞われた山城が所属するタキタが目指す全日本実業団駅伝。そして、因縁のように浦大地が率いることになった学生連合チームが挑む箱根駅伝。故障に苦しむ山城は復活出来るのか?チームの運命が交錯し、手に汗握る展開が繰り広げられる。それにしても、山城の可愛げのなさや傲慢さは変わらないにもかかわらず、浦や青木ら”チーム山城”の面々はこんなにも世話を焼きたがり、読者を含めて皆が山城を愛して止まないのです。
読了日:12月20日 著者:堂場瞬一
ヘブンメイカー スタープレイヤー (2)ヘブンメイカー スタープレイヤー (2)感想
これは”サージイッキクロニクル”という名の、片思いの相手を殺され、自暴自棄になっていた大学生の佐伯逸輝が、突然手に入れたスタープレイヤーの力によって、初めは自らの欲望を満たそうとし、次には弱さを隠しながら虚勢を張り、そして誰かの役に立とうとしながらも、最後まで間違い続けた歴史を記した壮大な物語。しかし、自分も愚かであると自覚し、同じように失敗するだろうと思えるからこそ、共に悔やみながらも応援したくなる。そして、ヘブンメイカーの名の通り、前作で登場しラストで夕月が目指したあの”ヘブン”の誕生史でもあります。
読了日:12月13日 著者:恒川光太郎
先生と僕 (双葉文庫)先生と僕 (双葉文庫)感想
大学で友人となった山田に誘われて推理小説研究会に入ったものの、殺人などの怖い話がからっきし苦手な「僕」こと伊藤二葉。大人びた言動でミステリ好き、勉強を心配する母親をカモフラージュするために二葉を家庭教師に雇う、生徒なのに「先生」こと瀬川隼人。隼人の冴えた推理と二葉の瞬間記憶能力の名コンビが、書店やカラオケボックス、市民プールやペットショップなどで起こる謎を解き明かす。隼人君が二葉への指南役となったミステリ入門書的な側面も読んでいて楽しいです。あと、二葉の「ペットショップなんか無くなればいいのに」には同意。
読了日:12月13日 著者:坂木司
鍵のない夢を見る (文春文庫)鍵のない夢を見る (文春文庫)感想
どこにでも居そうで、誰もが少しは心当たりが有りそうな、それでいて流石にそこまではと思い留まっているような、そんな感情を抱えた五人の女性が主人公の五つの短編。男性読者としては、どんな感想を抱いたら良いのか、見てはいけないものを見てしまったような居心地の悪さを感じるが、このそこはかとない気持ち悪さと恐ろしさ、登場する女性全てに感じるいたたまれなさこそが、著者が登場人物の心の内の暗部を描き切った証であり、直木賞受賞の理由なんでしょうね。それにしても、読んでて疲れた…。
読了日:12月12日 著者:辻村深月
神楽坂のマリエ ヤッさんII神楽坂のマリエ ヤッさんII感想
「誇り高き宿無し」ヤッさんの今度の相棒は、神楽坂のカフェが閉店に追い込まれ失意のどん底にあったマリエ。相変わらず気風のいいヤッさんの元で改めて食について学ぶマリエを見守る料理人や築地の職人たちの暖かさがいい。一方、どこか抜けていて惚れっぽすぎるマリエにはハラハラさせられっ放し。前作のタカオと比べて、マリエの弟子入りを決めるくだりまでが早すぎるのと、失敗した時もちょっと甘い気がするのはご愛嬌?ヤッさんらしく粋なラストには喝采を送りたくなりますが、ヤッさんが啖呵を切るシーンが少し少なかったのが残念かな。
読了日:12月8日 著者:原宏一
スタープレイヤー (単行本)スタープレイヤー (単行本)感想
何でも叶えられる「10の願い」の力を与えられ、異世界へ飛ばされたらどうするか?ファンタジー好きでなくとも、誰もが一度は想像したことがある大喜利のような設定だからこそ、ここまで正面切って挑むのはプロとして勇気がいると思います。能力を持つスタープレイヤーである主人公の夕月やマキオ、ラナログや田中さんのように呼び出された人間の外来民、キトパ族等の現地人、まだ見ぬ未踏の地の数々。RPGのゲームならともかく、現実に自分が放り込まれたら、前向きに進んでいく勇気を持てるかどうか、誰かのために祈る人になれる自信は…無い。
読了日:12月6日 著者:恒川光太郎
ジャイロスコープ (新潮文庫)ジャイロスコープ (新潮文庫)感想
書き下ろしを含む、それぞれテイストの違う7つの短編集。「浜田青年ホントスカ」では、相談屋の稲垣さんと浜田青年のやり取りも可笑しいが、ラストの二転三転の展開に驚愕。パラレル風の「if」や多重人格風の「二月下旬から三月上旬」の、読者に対して明らかに仕掛けられた騙され感も楽しい。なかでもお気に入りは、プレゼントを貰えない子共達の為のサンタクロースシステムを運営する会社という設定もさることながら、結果オーライの申し子である松田君のケアレスミスに、ユーモアと神様のレシピ的な優しさを感じられる「一人では無理がある」。
読了日:12月5日 著者:伊坂幸太郎
スカラムーシュ・ムーンスカラムーシュ・ムーン感想
日本三分の計と医翼主義により国家の治療という大計を目論むスカラムーシュ彦根。その神輿となる浪速の龍こと浪速府の村雨知事に仕掛けられる霞が関からのワクチン戦争を迎え撃つべく訪れた加賀のナナミ・エッグ。ワクチン製造のための有精卵を確保するため奔走するまなみや拓也、誠一たち。一方、彦根はあのモンテカルロのマリツィアが管理するドクトル・アマギの資金や極北の世良医師のほか、過去の第二医師会によるスト蜂起の因縁の決着、ジュネーブからベネツィアまで股にかけ八面六臂の活躍振り。しかし、因縁多過ぎて消化し切れない(>_<)
読了日:12月5日 著者:海堂尊

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