2013年5月の読書メーター

2013年5月の読書メーター
読んだ本の数:15冊
読んだページ数:5847ページ
ナイス数:483ナイス

鹿男あをによし (幻冬舎文庫)鹿男あをによし (幻冬舎文庫)感想
万城目ワールド全開の不思議な世界を楽しめると期待して読み始めました。しかしながら、純粋に笑い転げることのできた鴨川ホルモーと違い、関東大震災や富士山の噴火などの過去の大災害だけでなく、地震の発生が絡むことで近年の大震災を思い浮かべてしまい、本作はどうしても純粋に楽しむことができませんでした。また、先生に対する堀田の反抗的な態度の裏側にあった感情や背景の説明では、心の動きが腑に落ちなかったこともあり、今一つ登場人物に思い入れを感じることができませんでした。うーん、期待していただけに残念。
読了日:5月29日 著者:万城目 学
光媒の花 (集英社文庫)光媒の花 (集英社文庫)感想
道尾さんの作品は、いつもどこか歪んだというか倒錯した性的感情をモチーフにしたものが多いですが、この6編からなる短編集も第3章の「冬の蝶」まではとても暗くなる話です。しかし、第4章の「春の蝶」からはうって変わって明るく転換していきます。一つずつの短編は登場人物や話が少しずつ関わっている連作形式で進んでいきますが、最後にはすべての話が収斂され、誰もが持つ希望の光へ向かって歩みだしていく姿に、世の中のすべては少しずつ誰もが持つ大切な何かと繋がりあっているんだという作者のメッセージが感じられます。
読了日:5月26日 著者:道尾 秀介
闇の守り人 (新潮文庫)闇の守り人 (新潮文庫)感想
精霊の守り人となったチャグムを助けたバルサが向かったのは、かつて先王ログサムの陰謀に巻き込まれ、ジグロとともに追われることになった故郷カンバルの地。そこでバルサを待ち受けていたのは、ジグロを倒したと偽り英雄となったジグロの弟のユグロの新たなる野望だった。山の王がカンバルにもたらす贈り物とは、そしてヒョウル<闇の守り人>の正体とは。バルサとジグロの深い闇を少しずつ解きほぐしながら、まるで一緒に旅をしているかのように物語は進んでいく。それはとても哀しく、けれどもとても暖かい旅です。
読了日:5月23日 著者:上橋 菜穂子
精霊の守り人 (新潮文庫)精霊の守り人 (新潮文庫)感想
まさに一つの世界が構築されている。これはファンタジーとして最高のほめ言葉でしょう。児童向けとかそういう次元の問題ではありません。著者もあとがきで書かれていますが、そもそも大人向けとか児童向けかなんて漢字とひらがなの使用の違いぐらいのものです。物語の内容はしっかりとした世界観のもと、むしろ大人が読んでも文字通り異世界を疑似体験するかのような目くるめく冒険が待っています。チャグムとバルサの物語はまだまだ続きます。ゆっくりと楽しみながら読んでいこうと思います。
読了日:5月19日 著者:上橋 菜穂子
モダンタイムス(下) (講談社文庫)モダンタイムス(下) (講談社文庫)感想
こんなにも佳代子さんを頼もしく思えるなんて、上巻の時には思いもよりませんでした。世の中は一個人ではどうにもならない仕組みによって「そういうことになっている」わけで、人一人の力なんてちっぽけなものです。ネットやコンピュータ、携帯電話など、今からずっと未来の話にしてはやけに進歩していない陳腐な未来設定にやや苦笑ですが、魔王から本作を通じて伝えたかったのは、流されるな、考えろ、ということなのでしょうか。
読了日:5月17日 著者:伊坂 幸太郎
モダンタイムス(上) (講談社文庫)モダンタイムス(上) (講談社文庫)感想
とりあえず上巻読了。妻の佳代子が恐ろし過ぎる。そして、特定の検索キーワードを検索した人物が次々と事件に巻き込まれていくが、自らの意思に関係なく、全く真相の分からない状況に巻き込まれて行く展開に、早く続きが読みたくて仕方がなくなる。登場する人物もそれぞれ個性的で面白い。以前読んだ魔王、呼吸の続きのようだが、何処で安藤潤也が出てくるのか、結末が楽しみです。
読了日:5月17日 著者:伊坂 幸太郎
ナイチンゲールの沈黙(下) (宝島社文庫 C か 1-4 「このミス」大賞シリーズ)ナイチンゲールの沈黙(下) (宝島社文庫 C か 1-4 「このミス」大賞シリーズ)感想
本当にこの裏側で田口先生がジェネラル速水先生をめぐって、かの沼田教授率いるエシックスとの争いを繰り広げていたなんて、あまりの超人ぶりに信じ難い思いです。しかしながら、DMAや歌による共感覚などが、ちょっと突飛過ぎた感じです。それにしても、透き通るほど真っ直ぐで一途に思いを貫こうとする由紀と瑞人の二人に心を打たれます。そして、勇気を持って手術を受けたアツシ隊員に、敬礼!なのであります。
読了日:5月16日 著者:海堂 尊
ナイチンゲールの沈黙(上) (宝島社文庫 C か 1-3 「このミス」大賞シリーズ)ナイチンゲールの沈黙(上) (宝島社文庫 C か 1-3 「このミス」大賞シリーズ)感想
バチスタシリーズ第二弾の本作品ですが、実は3作目となるジェネラルルージュの凱旋と同時並行して進んでいるという物語でもあります。発行順でいうと、本作の方が先になるのですが、ジェネラルルージュの方が後から出た分、病院内で起きていることの状況の説明が丁寧なので、個人的にはそっちを先に読んでいる方が分かりやすい気がします。それから、やはり、小児科を舞台とした話はどうしても子どもの病気が避けて通れないので居た堪れない心境になってしまいます。それにしても、小夜の歌の力とは。あの時何が起きたのか。すぐに下巻へ。
読了日:5月15日 著者:海堂 尊
新世界より(下) (講談社文庫)新世界より(下) (講談社文庫)感想
読み終わりました。壮大なSF作品に圧倒され、最後は一気読みでした。それにしても、人間の愚かさや罪深さを感じさせる作品でした。呪力を持った人間と化鼠が犯した過ちは、巡り巡って繰り返される、途轍もない業の深さと、ある意味避けることのできない運命と呼ぶべきものなのかもしれません。
読了日:5月13日 著者:貴志 祐介
新世界より(中) (講談社文庫)新世界より(中) (講談社文庫)感想
次々にいなくなってしまう仲間たちと、先の読めない展開に、とても続きが気になって仕方がありません。それにしても、何とも言えない壮大な世界観と作り込まれた設定に感心します。どのような新世界が待っているのか、早く知りたいような、とてもじゃないが幸せな結末が待っているとも到底思えず不安も一杯です。早速、下巻へ。
読了日:5月13日 著者:貴志 祐介
ラッシュライフ (新潮文庫)ラッシュライフ (新潮文庫)感想
まさにエッシャーの騙し絵のように、自分が今何処に立っているのか、どっちへ向かって歩いていたのかわからなくなる物語。一見無関係のように進んで行くそれぞれの登場人物たちが、時間軸のトリックもあって、実は互いに交錯し、絡み合いながら展開していたことがわかっていくのが爽快です。ここでも黒澤の活躍もさることながら、最後に豊田が戸田の申し出を断る様は実に痛快。「ラッシュライフー豊潤な人生」とは何だろうと考えさせられます。
読了日:5月11日 著者:伊坂 幸太郎
龍神の雨 (新潮文庫)龍神の雨 (新潮文庫)感想
やはり一筋縄ではいかない道尾作品。読んでいてとても不安にさせられる展開はいつものとおりですが、やっぱり最後に引っくり返されます。まさに「想像は人を喰らう」。観念の産物である龍が、人の心の内に棲む様々な負の感情を呑み込もうとするように、人は自ら不安という罠に陥れられていく。「何で、こんなことになっちゃったのかな」取り返しのつかない現実に、家族のことだけはどんなことがあっても信じなければいけない、という蓮の言葉が止まない雨音のように響きます。最後の龍神の雨は蓮と楓の2人にどんな未来をもたらすのでしょうか。
読了日:5月7日 著者:道尾 秀介
V.T.R. (講談社文庫)V.T.R. (講談社文庫)感想
初の辻村作品ということで何気なく図書館で手に取ったものの、これはチヨダコーキの作品として読まなければならなかったとは完全に失敗。ごめんなさい。「スロウハイツの神様」を読んでいないので、チヨダコーキなる人物像や解説の赤羽環も全くつながりがわからず置いてきぼり感で一杯の読後感。やたらと短文で区切る文体や、オサレ感たっぷりのセリフ回しや世界観も(わざとそういう作風にしているのだろうが)正直言って合わなかった。やはり分厚さと上下巻に躊躇せず、素直に『冷たい校舎の時は止まる』を借りておくべきだったか。
読了日:5月6日 著者:辻村 深月
ホルモー六景 (角川文庫)ホルモー六景 (角川文庫)感想
鴨川ホルモーのスピンオフ的作品。勿論単体での面白さを否定するわけではないが、セットで読むことをオススメする。しかも、出来れば間髪入れずに、それも手元に鴨川ホルモーを持って読むと良い。何故なら、きっとあの場面やあの場面を振り返りたくなるから。青竜会のあの人や、本編ではスポットを当てきれなかった他大学のメンバー達の様々な活躍がとても楽しかった。それにしてもホルモーの世界は奥深い。京都だけだと安心出来なくなってしまった。恐るべし。
読了日:5月4日 著者:万城目 学
十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)感想
"新"本格ミステリーの名に恥じない名作。今となってはいかにもミステリー然とした装いが逆に新鮮に感じるぐらい、孤島と本土を使ったトリックと、驚愕の結末はお見事です。
読了日:5月2日 著者:綾辻 行人

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