2013年6月の読書メーター

6月はやっぱり、何といっても12年ぶりの新作が出た十二国記丕緒の鳥」ですよね。

2013年6月の読書メーター
読んだ本の数:20冊
読んだページ数:6597ページ
ナイス数:668ナイス

バイバイ、ブラックバード (双葉文庫)バイバイ、ブラックバード (双葉文庫)感想
やっぱり、繭美がマツコに思えて仕方なかったという意見が多いんですね。見た目の説明とか全然よくみたら違うんですけど、毒舌なのに何処か愛情を感じてしまうところとかが共通しているのでしょうか。物語は「あのバス」に乗ることを強制された主人公の星野くんが、五股をかけていた女性達に別れを告げに行き、そこで付添人の繭美を交えて繰り広げられる五者五様ともいうべき人間ドラマを描いたもの。何とも不思議な5つの話しと、繭美に焦点を当てて描いた第6話。個人的には5話のラストの睦子と佐野さんの涙が美しいと感じた。
読了日:6月30日 著者:伊坂 幸太郎
オレたちバブル入行組 (文春文庫)オレたちバブル入行組 (文春文庫)感想
半沢を中心とするいわゆるバブル時代に銀行へ入行した銀行マンたちを描く作品。「俺たち花のバブル組」と読む順番が逆になってしまいましたが、半沢の課長時代を知ることができ、ああ~あの事件のことね、とバブル組で触れられる事件を振り返った感じで、なんだか少し得した気分。ここでもやられたら徹底的にやり返す半沢の容赦なさは描かれますが、次作と同じで少し人間くさい取り引きも出てくるあたり、完全に善と悪を分けた勧善懲悪にはしないのが本作の見どころでもあるのかな。そして組織の理不尽さと歪みはいつの時代にも共通か。
読了日:6月30日 著者:池井戸 潤
丕緒の鳥 十二国記 (新潮文庫 お 37-58 十二国記)丕緒の鳥 十二国記 (新潮文庫 お 37-58 十二国記)感想
12年ぶりの新作オリジナル短篇集。ようやく十二国の物語を再び読める日がやってきたと思うと感慨もひとしお。前にも増して、難解な言い回しや単語が増えているような気がするが、そこにあるのは紛れもなく私たちが"知っている"十二国の物語でした。いずれも王の政に対する民の視点から社会を射抜くかのような重厚なテーマを扱った4篇。十二国における王の在、不在の重さを感じさせるが、本題にもなっている丕諸の鳥で景王の陽子が出てきたのが嬉しい。こうなると、いやが上にも長編への期待が高まります。楽しみです。
読了日:6月29日 著者:小野 不由美
さよなら妖精 (創元推理文庫)さよなら妖精 (創元推理文庫)感想
とても重いものを心の奥底に残していく、そんな作品でした。古典部シリーズなどと同様に、「日常の謎」派ミステリとしての立ち位置は健在で、舞台となった土地柄や風習などに根付いた何気ない日常の風景の中におけるちょっとした謎を、遠い異国<ユーゴスラヴィア>から来たマーヤを尋ね役としながら、解き明かしていく。そして、ユーゴスラヴィアの内戦、分裂という歴史的事実と絡ませながら、マーヤの所在を確かめるべく物語の核心へと迫っていく。タイトルに込められた思いは、胸に突き刺さるものがあります。
読了日:6月25日 著者:米澤 穂信
桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)感想
以前、産経新聞に掲載されていた著者のインタビューに、「鋭い観察眼。瑞々しい感性。自分の若いころを思い出してグッときた」といういかにも若さ故の評価から卒業しなければならない、と書かれているのを見て、どのような小説を書く人なのだろうと逆に興味が湧いた。本作を読んでみて、そのように評価してしまいがちなのも、あながち無理はないよなとも思うが、では翻って若い頃ならば誰にでも書けるというのか。否、この表現力はなんだろう。この感情の臨場感。刹那的な思いが伝わってくる。決して若いから書けるのではないと思う。
読了日:6月23日 著者:朝井 リョウ
ロマンス小説の七日間 (角川文庫)ロマンス小説の七日間 (角川文庫)感想
中世を舞台にしたアリエノールとウォリックとシャンドスの物語が、現実の神名とあかりの恋愛と精神状態によって、ストーリーが超翻訳へと変貌していく展開が面白い。それにしても、あのまま出稿して欲しかったなあ。ファンタジー好きで、中世設定に抵抗なければ気軽に読むにはもってこいの作品ですね。
読了日:6月23日 著者:三浦 しをん
クジラの彼 (角川文庫)クジラの彼 (角川文庫)感想
なるほどベタ甘とはこういうことか。6つの短編から構成されていますが、そのうちの3編は「空の中」と「海の底」(いずれも未読です)の番外編なのですね。いずれもカッコよくて少しダメなところに愛嬌のある男と女たちが登場しますが、きっと女性はこんな男が好きなんだろうなと思いながら読んでいました。それと、男目線で見ると、男ってこんな風に会話しないよなぁと感じる部分も若干ありました。個人的には脱柵エレジーの清田二曹と吉川三曹の絶妙な関係が良かったです。
読了日:6月22日 著者:有川 浩
ツナグ (新潮文庫)ツナグ (新潮文庫)感想
生者と死者の一晩かぎりの邂逅の果てにあるのは、未来へと続く命のリレーとでも言うべきでしょうか。登場するのは、いずれも心に悔いを抱えたまま、死者との面会を望む人々。その結果は必ずしも前向きなものばかりでは無かったが、それでも生者はその結果を抱えて生きていかなければならない。各話の中では、待ち人の心得が特に心に残りましたが、同じ立場として、長男の心得は胸に刺さるものがありました。そして、やはり月並みですが、自分なら誰に会いたいと思うのか、誰に会いに来てもらいたいと思うのか、考えさせられます。
読了日:6月16日 著者:辻村 深月
月の恋人: ーMoon Loversー (新潮文庫)月の恋人: ーMoon Loversー (新潮文庫)感想
あとがきまでキムタク主演の月9ドラマの原作だったとは知らずに読んでいました。どおりで道尾さんらしくないはずだ(笑)ただ、登場人物の関係や設定も随分本作とは違う内容のようですね。ともかく、テレビ向きのためか、いつものような暗い闇のような部分は控えめだった本作ですが、おんちゃんの徹二や弥生の祖父の一松、花火職人の高畠社長などの脇役のおっちゃん達に比べ、ヒロイン役の弥生やシュウメイがそれほど魅力的ではなく、ストーリーにも深みがなかったかなというのが正直な感想です。
読了日:6月15日 著者:道尾 秀介
キノの旅〈10〉the Beautiful World (電撃文庫)キノの旅〈10〉the Beautiful World (電撃文庫)感想
「こんなところにある国」がやりたかっただけなのでは?というのは言いっこなしでしょうか。意表をついたあとがきで面白かったですけどね。それと、「歌姫のいる国」が長すぎるのか、1冊の本としてみたときに他の話とのバランスが良くなかった気がします。
読了日:6月13日 著者:時雨沢 恵一
極北クレイマー 下 (朝日文庫)極北クレイマー 下 (朝日文庫)感想
この物語が財政破綻したとある自治体をモデルにして書かれているのは明白だが、流石に行政と病院現場の自堕落ぶりは脚色されていると思いながら読んでいた。しかし、図らずも後書きで、嘘から出た誠だったことが明らかにされてしまった。清川准教授の、無勉強で無責任な報道を垂れ流すキャスターへの反論と、世良医師の「医療のために何かしようという市民はいない」には同意。それにしても、中途半端なところで終わってしまったが、この後は極北ラプソディで完結してもらえるのでしょうか?
読了日:6月9日 著者:海堂 尊
極北クレイマー 上 (朝日文庫)極北クレイマー 上 (朝日文庫)感想
タイトルを極北"クライマー"と勘違いしていましたが、正しくは極北クレイマーなのですね。舞台は桜宮市から一気に北上し、極北市民病院。現代の地域医療行政の問題点を具現化したかのような地方病院に赴任することになった今中外科医を待ち受けるのは、堕落した病気スタッフ。そこへ颯爽と現れた姫宮医師の無双っぷりは気持ち良すぎて流石の一言。姫宮ブリザード恐るべし。この後、万を時して真打ち白鳥の登場はあるのか。楽しみにしながら、下巻へ。
読了日:6月9日 著者:海堂 尊
ゴールデンスランバー (新潮文庫)ゴールデンスランバー (新潮文庫)感想
面白かった。まさにジェットコースタームービーのようにスリル満点で、ラストにかけての伏線の回収も見事。そして何より最終章で語られる3カ月後の後日譚がとてもいい。両親への手紙と七海が押してくれた「たいへんよくできました」のスタンプに救われる。結局、おおきな権力に立ち向かいきれない現実に少しのやり切れなさはあるものの、やっぱり逃げるが勝ちなのだ。それにしても、読み終わってから絶対に第3部の「事件から二十年後」を読み返したくなります。あれを書いているライターって誰なんでしょうね?
読了日:6月8日 著者:伊坂 幸太郎
オレたち花のバブル組 (文春文庫)オレたち花のバブル組 (文春文庫)感想
とかくある意味の揶揄を持って言われがちなバブル組という言葉。華やかなりしその頃を体験していない後の世代からは想像もつかない時代。しかしながら、いつの時代にだって気骨を持った人間はいるのだ。半沢や近藤たちの姿を見るうちにそう感じさせられる。そして、最後にはスカッとした爽快感とともに組織人の悲哀を感じざるを得ない。それでも、己の仕事に対するプライドと、心には矜恃を持っていたいと思わせてくれる。半沢の言葉が印象的。「基本は性善説。しかし、やられたら倍返しだ。」結構好きだ。
読了日:6月6日 著者:池井戸 潤
イノセント・ゲリラの祝祭 (下) (宝島社文庫 C か 1-8)イノセント・ゲリラの祝祭 (下) (宝島社文庫 C か 1-8)感想
フィクションのエンタメ小説であるはずなのに、そうとは看過できないほど著者の思いが詰まっているように感じた。それほど、日本の医療現場は疲弊し、医療と司法の乖離は根深いものなのか。ただ、小説としては、官僚の余りの典型的悪徳ぶり描かれ方とともに、彦根の演説も、やりすぎの感は否めない。それにしても、いくらなんでも坂田局長ほど「でんがな、まんがな」の喋りの人は現実には関西にも居ませんよ。あと、結局少ししか登場しなかったシオンさんの活躍はまた別の機会のお楽しみでしょうか?
読了日:6月4日 著者:海堂 尊
イノセント・ゲリラの祝祭 (上) (宝島社文庫 C か 1-7)イノセント・ゲリラの祝祭 (上) (宝島社文庫 C か 1-7)感想
田口・白鳥シリーズ第4弾。それにしても、次から次へと白鳥を上回るキャラクターが出てくるとは、厚生労働省はびっくり箱みたい。いや、厚労省だけじゃないか。台詞回しや通り名が大仰なのはいつも通り。今回は、司法解剖をめぐる監察医制度を問題として取り上げているが、実際のところそんなに件数が少ないなんて知らなかったし、どちらかというと死因不明の不審死なんてすべて解剖されていると思っていたぐらい。(法医学教室の事件簿の見過ぎ?)最後にミラージュ・シオンというまたもや謎めいたキャラも登場したところで下巻へ。
読了日:6月4日 著者:海堂 尊
まほろ駅前番外地 (文春文庫)まほろ駅前番外地 (文春文庫)感想
帰ってきた多田&行天コンビ。本編で登場した多田便利軒を取り巻く愉快な登場人物たちが再登場し、それぞれの日常や過去が語られることで多田と行天だけでなく、まほろという街の奥行きが増していくような気がした。特に曽根田のばあちゃんの「ろまんす」を多田と行天になぞらえて語った「思い出の銀幕」は秀逸。また、明暗が分かれたのが、「逃げる男」で登場したシャチョーこと亜沙子さんに対する多田の気持ちの明の部分と、泣きわめく子供に見せた行天の激高の暗の部分。2人の今後がますます気になる。
読了日:6月2日 著者:三浦 しをん
クリムゾンの迷宮 (角川ホラー文庫)クリムゾンの迷宮 (角川ホラー文庫)感想
突然、ゼロサムのサバイバルゲームに放り込まれた9人の男女。互いに疑心暗鬼の状況のなか、限られたアイテムと情報を駆使しながら、生き残りをかけて必死に争う。まさに王道というべきゲームブック的RPGの醍醐味をこれでもかと盛り込んであります。そして、ラストはトゥルーエンドと思いきや…なかなか一筋縄ではいきませんね。
読了日:6月1日 著者:貴志 祐介
螺鈿迷宮 下 (角川文庫)螺鈿迷宮 下 (角川文庫)感想
巌雄先生の圧倒的な存在感の前にあの白鳥が子ども扱いされ、完敗するほど、桜宮の光と闇は深いものでした。小百合やすみれの考えた人の終末の在り方は決して看過されるべきものではありませんが、巌雄先生からそれを託された天馬はどんな医者になるのでしょうか。それにしても、驚愕のラストシーンに続きが気になります。
読了日:6月1日 著者:海堂 尊
螺鈿迷宮 上 (角川文庫)螺鈿迷宮 上 (角川文庫)感想
天馬のアンラッキートルネードぶりや、姫宮のプリンセスターミネーターぶりがくどいぐらい畳み掛けられるのにやや辟易しながらも、後半には白鳥も登場し、話はそれぞれの陣営の思惑を含ませながら否が応でも盛り上がる。それにしても、いつにもまして大仰な言い回しとあり得ないぐらいの設定は、ちょっと過剰過ぎるのではと思ってしまう。
読了日:6月1日 著者:海堂 尊

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