2013年7月の読書メーター

2013年7月の読書メーター
読んだ本の数:12冊
読んだページ数:4330ページ
ナイス数:705ナイス

海の底 (角川文庫)海の底 (角川文庫)感想
間違って?クジラの彼を先に読んでしまいましたが、冬原と夏木、そして望との出会いはここから始まったのですね。冒頭から巨大ザリガニが攻めてくるというトンデモ展開とあまりに人が死んでいく様子にちょっと戸惑い、また、圭介を中心とした子どもたちのいざこざも胸糞の悪い言動が多く、一気に読み進めるとは行きませんでした。それにしても、最終的に自衛隊がレガリスをあっさりと駆逐していく様は、いくら問題提起だとしても人々の苦闘と犠牲を考えると暗澹たる気持ちが拭えず、とてもすっきりとした読後感とは…すべての犠牲者と艦長に合掌。
読了日:7月28日 著者:有川 浩
格闘する者に○ (新潮文庫)格闘する者に○ (新潮文庫)感想
可南子のキャラが際立っていて、西園寺のじーさんとのフェチな付き合いや、婿養子の父と後妻、その息子である弟との微妙な家族関係、政治家一家の跡継ぎをめぐる地元との軋轢、同級生の砂子やニキちゃんたちとの型破りでわが道を行く就職活動など、一つ一つのエピソードはとても面白おかしく、ときにホロッとさせられたりするが、物語としては少し中途半端でラストもまとまりに欠けたような印象を受けた。
読了日:7月25日 著者:三浦 しをん
鉄の骨 (講談社文庫)鉄の骨 (講談社文庫)感想
土木建設業界に蔓延る談合を真っ向から取り上げつつ、平太という真っ直ぐなキャラによって爽やかに描いてみせる、池井戸さんらしい社会派人間ドラマ。やはり読者側としては平太に肩入れして読んでしまうために、いかにも銀行は冷たい組織であり、エラそうに振る舞う融資担当の園田には腹を立て、そんな二人の間をふらふらする萌にはイライラさせられっぱなしなのです。面白かったけど、だからこそ余計にこの結末には釈然としないものを感じる。やっぱりタイトルは「走れ平太」の方に1票。平太の母の息子を思う気遣いには胸を打たれる。
読了日:7月23日 著者:池井戸 潤
ロスジェネの逆襲ロスジェネの逆襲感想
相変わらずやられたら倍返しの半沢節は健在で、土壇場からの逆転劇も痛快。しかしながら、本作の主役は果たして、バブル世代を代表するサラリーマン戦士である半沢であったのか、失われた10年と言われた就職氷河期を経験したロスジェネ世代代表の森山だったのか。最後に半沢が森山に語った、世代間で争い批判するだけではなく世の中を納得させるビジョンを示せという言葉こそが、次の世代への期待を込めたエールであり、その答えを出せたときこそ、真のロスジェネ世代の逆襲が始まるのだろう。「戦え、森山」。一番好きなシーンでした。
読了日:7月20日 著者:池井戸 潤
追想五断章 (集英社文庫)追想五断章 (集英社文庫)感想
読み始めは、リドルストーリーに隠されたヒントからどこかに存在するはずの5つの断章を探し求める謎解き要素に気持ちが逸るが、先に進み、断章の著者である依頼人の父の秘められた過去と、各々の断章に隠された心情が明らかになるにつれて、徐々に主人公の躊躇いと同調するかのようにページをめくる手が重くなっていくような心境になった。リドルストーリーの最後の結末の1行という、本来あるべきではない物を使って物語を進めていく凝った仕掛けは、如何にも米澤さんらしく謎解きミステリとしては上質の出来だと思いました。
読了日:7月15日 著者:米澤 穂信
フィッシュストーリー (新潮文庫)フィッシュストーリー (新潮文庫)感想
フィッシュストーリー=「ほら話」とは知りませんでした。4つの物語からなる中短編集。「サクリファイス」と「ポテチ」に黒澤が出てきたのが嬉しい。そして表題作のフィッシュストーリーでは、さすがと唸りたくなるような物語の構成力。誰かに届いて欲しいと願う強い気持ちは、時を超えて未来を救うことになるが、それは一見偶然のようで決して偶然ではなく、それぞれが強い思いを持って自らの出来ることを一途に果たそうとした結果の連鎖によるもの。世の中はそうしてどこかで誰かに救われているのかもしれない。ポテチの塩味も美味しいよね。
読了日:7月13日 著者:伊坂 幸太郎
球体の蛇 (角川文庫)球体の蛇 (角川文庫)感想
やっぱり道尾作品はこうだったと再認識させられる。最近、暖かい本を読んでいたせいか、油断していたところに不意に鳩尾か下腹部辺りにきついパンチを浴びたような気分。サヨの真意も、智子の本当の消息も遂に知り得ることはなく、トモとナオの間の真実も結局のところはよくわからないまま、これで良かったのか気持ちは翻弄される。それ故に、スッキリしない読後感かというとそういう訳でもなく、人の心の奥底の暗闇を只々思い知らされる、そんな感じ。
読了日:7月13日 著者:道尾 秀介
かのこちゃんとマドレーヌ夫人 (角川文庫)かのこちゃんとマドレーヌ夫人 (角川文庫)感想
登場するのは小学校1年生のかのこちゃんと年老いた柴犬の玄三郎とその妻でアカトラの猫のマドレーヌ夫人、そして猫友達の和三盆とミケランジェロたち。なんだか絵本のような、おとぎ話のような空想ファンタジー。かのこちゃんと友達のすずちゃんの留まるところを知らない行動力と発想力、「ござる」の応酬やお茶会の場面は読んでいて笑いが止まらない。そして2人に訪れる大人の別れに涙。マドレーヌ夫人と玄三郎の夫婦愛もさることながら、猫股によるマドレーヌ夫人の大活躍には喝采を送りたい。読み終わってほっこりする気持ちになれる1冊。
読了日:7月10日 著者:万城目 学
夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)感想
四畳半に出てきた樋口師匠と羽貫さんがここでも大活躍していました。どっちを先に読むほうがいいのかな?相変わらず独特の雰囲気を持つ京都を舞台に繰り広げられる摩訶不思議な人間模様。独特の言葉遊びや言い回しと文体は読む人を選ぶのかもしれませんが、個人的には非常にツボに嵌って面白く読むことができました。いやオモチロイと言うべきでしょうか。巻末の羽海野さんの解説画も、楽しい読後感をよく表していて良かったです。こんな話を生み出してしまう京都という所にはやっぱり何かが潜んでいる気がしてなりません。
読了日:7月8日 著者:森見 登美彦
四畳半神話大系 (角川文庫)四畳半神話大系 (角川文庫)感想
それにしても京都というところは、どこか人をおかしくさせる異世界的舞台として、そうであっても不思議ではない雰囲気を持っている気がしてならない。(京都の人ごめんなさい)。そんな京都で暮らす大学生の、とてもよくある自堕落的大学生活において、いずれの道を選んでも必ず辿る退廃への道を描いた本作品はとても興味深く、面白く読むことができた。何でも手が届く範囲にある四畳半は、まさしく自分にとっての世界そのものである。登場人物もいずれも個性的で、ちょっとずつ異なりながら繰り返されるエピソードにもニヤリとさせられました。
読了日:7月6日 著者:森見 登美彦
アリアドネの弾丸(下) (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)アリアドネの弾丸(下) (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)感想
このスピード感と緊迫感は下巻でも止まらない。まさにノンストップ。オールスターキャストも勢揃いで、ナイチンゲールのあの人たちまで4Sエージェンシーとして登場するなんて何ともにくい。最近、アクの強い登場人物に押され気味だった白鳥が今回はまさに八面六臂の大活躍。最初から最後まで独壇場とも言えるロジカルモンスターっぷりでした。それにしても腹黒コンビ恐るべし。
読了日:7月2日 著者:海堂 尊
アリアドネの弾丸(上) (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)アリアドネの弾丸(上) (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)感想
田口&白鳥コンビシリーズ第5弾。オールスターキャスト揃い踏みの大活劇を予感させる。突然エーアイセンター長に任命された田口医師の不運ぶりも相変わらず。それに、まさか極北のあの人が、実はあの人だったなんて…衝撃の事実。そして、会議の場になると至極まともな発言を行う白鳥を”会議性人格障害”とはまさに言い得て妙。それにしても、北山元局長やら斑鳩広報室長、極め付けは宇佐美警視と、相変わらず警察組織も個性的な人がたくさん出てきますが、まさか高階病院長に限ってそんなことがあるはずは…というところで下巻へと続く。
読了日:7月1日 著者:海堂 尊

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