2013年9月の読書メーター

先月は割りと読むことが出来ました。守り人シリーズから始まった9月でしたが、印象深いのは神様のカルテ図書館戦争シリーズかな。あと、博士の愛した数式も良かったですね。

 

2013年9月の読書メーター
読んだ本の数:17冊
読んだページ数:5714ページ
ナイス数:811ナイス

あるキング (徳間文庫)あるキング (徳間文庫)感想
本当に不思議な話でした。おそらくはフェアとファウルというところから着想を得て、野球と結びつけたのだろうこの物語は、シェイクスピアマクベスの台詞を頻繁に引用しながら淡々と進んでいく。とある地方弱小球団のスター選手と入れ替わるようにこの世に生をうけた天才野球選手の喜劇とも悲劇ともいえる人生。自らのためだけにひたすらホームランを打ち続けた孤高の王様は、いつしか人のために予告ホームランを打つ。しかしいつか王は斃れる時がくる。そして代々繋がっていく。なにせこれはあるキングの物語なのだから。
読了日:9月30日 著者:伊坂幸太郎
憑物語憑物語感想
いつも無表情で無愛想ながら、その台詞にはどこかしらユーモアを感じさせる笑わない人形、憑喪神であり、影縫余弦さんの式神、そしてUFOキャッチャーにも入っちゃうよつぎドール、斧乃木余接ちゃんがメインの物語。吸血鬼としての力に頼りすぎてしまった阿良々木さんが人としてあり続けようとするこの物語は、阿良々木暦の失敗譚であり成長譚であるこの物語は、間違いなくファイナルシーズンとして終わりが近づいていることを感じさせる。それにしても、冒頭の目覚し時計から月火ちゃんとのお風呂のくだりまでがちょっと冗長すぎた気がします。
読了日:9月28日 著者:西尾維新
ミッドナイト・ラン! (講談社文庫)ミッドナイト・ラン! (講談社文庫)感想
人生に絶望し、自殺用の闇サイトを介して出会った縁もゆかりも年齢もバラバラな五人が、死に場所を決めた所に突然助けを求めて飛び込んできた少女を助けてしまったことから、イカれたヤクザや汚職警官に追われることになり、ハリウッドさながらのカーチェイス、街全体を巻き込んだ追いつ、追われつを繰り広げる。うん、まぁ、そのぉ…あれだ。エキナカ本屋対象第1位という宣伝文句にあえて乗ったのだから、これ以上はあえて言うまい。そうだ、きっと映画なら面白いに違いない。それにしてもまぁ車のよく飛ぶことです。
読了日:9月27日 著者:樋口明雄
at Home (角川文庫)at Home (角川文庫)感想
いずれも世間からみればいびつだと言われるであろう4つの家庭を通して、親として、兄弟として、様々な家族としてのあり様が描かれる。何が正しくて、何が普通か何て誰にもわからないし、人によって違って当たり前。ただ、自分の周りに居る一番身近な存在である家族に対する気持ちを問いかけられた気がする。やはり表題作の「at Home」のインパクトが大きいが、個人的には「日曜日のヤドカリ」の弥生さんがツボです。敬語の弥生さんとお父さんとの一見他人行儀だけれども信頼関係溢れたやり取りがたまりません。
読了日:9月27日 著者:本多孝好
レインツリーの国 (新潮文庫)レインツリーの国 (新潮文庫)感想
図書館内乱からの流れで手にとってみた一冊。中途失聴者であるひとみと、真っ直ぐだけれども早くに父を亡くした過去を持つ、東京でも関西弁丸出しの伸との恋愛を描いた作品。昔はまったライトノベルの結末にトラウマを持つ二人がブログの感想をきっかけに出会うという設定がかつての中二心をくすぐります。同じ本を読んでいる人が周りにいないもどかしさ、特にそれが著名な文学作品ならともかく、ラノベの場合は大きな声でも言えず悶々とすることこの上ない。内容と直接関係のない感想になってしまいましたが、よくわかります。
読了日:9月26日 著者:有川浩
リーガル・ハイリーガル・ハイ感想
今、何かと話題の堺雅人主演の人気ドラマのノベライズ。残念ながら見ていなかったので新シリーズも始まるということもあって、図書館で借りてみましたが、恐らくはなまじっか忠実に映像を文章化してあるだろうと思われるだけに、結果的に余計にドラマを見る方が面白いのだろうなというのが正直な感想。やっぱりキャラの魅力と役者さんの演技が魅力なのだから仕方ないですね。でもドラマを見たくなったのは事実。そういう意味では、元のドラマの魅力を伝えるノベライズの役割はちゃんと果たしているといえるのかも。新シリーズ楽しみです。
読了日:9月25日 著者:古沢良太(脚本),百瀬しのぶ(ノベライズ)
図書館内乱  図書館戦争シリーズ(2) (角川文庫)図書館内乱 図書館戦争シリーズ(2) (角川文庫)感想
図書館戦争シリーズ第二弾。内乱というタイトル通り、良化特務機関との抗争が中心だった一巻と比べ、図書館内部の派閥争いや家族間、そしてそれぞれの心の内の葛藤などにスポットが当てられた物語でした。中でも、小牧と柴崎がほとんどメインのような扱いで、小牧と毬江ちゃんの恋模様もさることながら、柴崎の内面の葛藤と本音と建前の姿が印象的でした。それと、後書を読んで手塚兄が当初の構想に無かったと知ってビックリ。また、巻末の児玉さんと有川さんの特別対談の、心根としての男らしさ、女らしさ論には至極同意するところです。
読了日:9月23日 著者:有川浩
神様のカルテ (小学館文庫)神様のカルテ (小学館文庫)感想
心地の良い話に出会うことができた、そんな気分です。話題になっていたのは知っていましたが、ありがちな医者の感動ものと侮っていました。スミマセン。イチ先生の独特の言い回しと、患者に対する接し方、御嶽荘に住まう男爵や学士殿や、本庄病院の医師や看護師、患者も含めた周囲の人々、そして何より細君のハルちゃん!すべてが心地よく、ときに切なく、暖かい物語として通り過ぎていきます。学士殿との別れも、田川さんや安曇さんとの別れも涙なくしては読むことができません。信州の情景が目に浮かぶかのような描写もまた良い。良かったです。
読了日:9月21日 著者:夏川草介
学ばない探偵たちの学園 (光文社文庫)学ばない探偵たちの学園 (光文社文庫)感想
探偵部の3人のコミカルで軽妙なやり取りを楽しみつつ、軽く楽しめるおバカ系のミステリではあるのですが、如何せん、このノリについていけるかというと、個人的にはちょっとキツイかなというのが正直な感想です。トリックはよく考えられているとは思うものの、やはり偶然の要素が大きい感が否めず、まあそこは細かいこと言わずに楽しんだもの勝ちと言ったところでしょうか。登場人物は探偵部の3人を始め、いずれも個性的で面白かったですが、祖師ヶ谷警部が途中で殆ど出番が無くなってしまったのが少しもったいない気がしました。
読了日:9月20日 著者:東川篤哉
往復書簡 (幻冬舎文庫)往復書簡 (幻冬舎文庫)感想
過去に抱える傷とそこに隠された真実を、それぞれ10年後、20年後、15年後に手紙を交わすなかで、徐々に明らかにされていくと思いきや、そこで湊さん本領発揮の二転三転。一体真実はどれ?!現実の手紙のやり取りなら、もう少し時間の流れは悠長で、こんなにテンポ良く物事が進むわけないよな、というのはご愛嬌で、物語の構成としては面白かったです。最後の1年後の連絡網で描かれたその後にホッとしますが、意地悪く言うと、らしくなくて余計だったかもしれない。
読了日:9月18日 著者:湊かなえ
図書館戦争  図書館戦争シリーズ(1) (角川文庫)図書館戦争 図書館戦争シリーズ(1) (角川文庫)感想
アニメの時は、何やらこの時代には図書館を守るための軍があって、それでいて堅い話かと思いきや、中身はラブコメかよ!っていう感じで、その設定と世界観に嵌りきれないまま途中で視聴を断念してしまったのですが、今更ながら読んでみて、先に原作を読んでいたら良かったとちょっと後悔。壮大なる妄想によって形創られた世界で、懸命に図書館の自立を守り抜く為に戦う若者たちの清々しさと微笑ましい恋愛の甘い描写にニヤリとさせられます。それにしても、堂上と小牧のナイスコンビの格好良さは、いかにも有川さんらしい。
読了日:9月15日 著者:有川浩
MISSING (双葉文庫)MISSING (双葉文庫)感想
いずれも、身近にある死を題材に、何かを失った人たちが登場する5つの短編からなる短編集。率直な言い回しと、簡潔な会話からなる文体は読みやすい。登場する人物は、隠し事のできないぶっきらぼうとも実直とも取れるような口調で、特に「祈灯」の兄、「蝉の証」の僕、「瑠璃」の弟は、何処か似たような雰囲気を感じた。心の内の隠していた闇を覗き見られたような気恥ずかしさと、眈々とした哀しみを漂わせる作品でした。
読了日:9月10日 著者:本多孝好
博士の愛した数式 (新潮文庫)博士の愛した数式 (新潮文庫)感想
事故により、記憶が80分しかもたない数学者の博士と、10歳の子を持つ家政婦との、暖かい心の交流を描いた作品。場面毎に散りばめられた数式とその成す意味の美しさには目を見張るばかりであり、博士の優しさとあいまって、余計に読者を悲しい気分にさせるが、全体を通して、とても暖かい雰囲気に包まれているような心境になる。また、阪神タイガース江夏豊の背番号などの活かし方もとても上手い。そして、最後まで決して博士は主人公とその息子のルートを覚えることはないが、ラストシーンは涙無しには読めない。とても良かった。
読了日:9月9日 著者:小川洋子
神去なあなあ日常 (徳間文庫)神去なあなあ日常 (徳間文庫)感想
感想が難しい。神去村を舞台に、都会から突然林業の世界に放り込まれた今時の若者である勇気が、村の人々や山の自然の神秘との触れ合いのなかで成長していく姿をライトな本人語りで描く物語と言えばいいのだろうけれと、話に込められた重い意味を考えてしまう。人生の無常も自然に対する怖れに対しても真摯に向き合いながらも、軽やかになあなあと日常の事として全て受け入れてしまっている村人達が印象的です。この世界を、これからも受け継いでいけるのだろうか。失ってしまうのかと思うと空恐ろしい。
読了日:9月7日 著者:三浦しをん
謎解きはディナーのあとで謎解きはディナーのあとで感想
あくまで本格ミステリとして、安楽椅子探偵のフォーマットに乗っ取りつつ、ユーモアを交えたコメディタッチな体裁により、ライト感を演出して読者を飽きさせない作りになっています。マンガチックな演出や台詞回しも楽しく、あまり観てませんが、テレビドラマ版も原作の雰囲気をよく再現していたのではないでしょうか。とはいえ、本格志向派向けには軽すぎるきらいがあるのも事実。あまり細かいことを突っ込みながら読むのではなく、エンタメとして楽しんだのも勝ちですね。
読了日:9月5日 著者:東川篤哉
虚空の旅人 (新潮文庫)虚空の旅人 (新潮文庫)感想
シリーズは遂に、チャグムを新ヨゴ皇国からサンガル王国へと旅立たせ、新たな「旅人」シリーズへとステージを移していく。14歳になり、逞しく成長したチャグムの姿には感慨深いものを感じる。間違いなく、これまでの帝とは違った形で国を統べることのできる王たる器を備え、隣国とも手を携えながらシュガと共に民のための為政を行っていく日が訪れるのが待ち遠しく思える。これからシリーズを読み進めていくなかで、どのように成長していくのか、とても楽しみである。
読了日:9月4日 著者:上橋菜穂子
夢の守り人 (新潮文庫)夢の守り人 (新潮文庫)感想
守り人シリーズ第3弾。今回は、タンダとトロガイ師が中心の物語。しかも、トロガイ師の若かりし頃が描かれ、呪術師となった経緯や、何とその夢の息子であるユグノまで登場。そこへ、バルサとチャグム、シュガなどのお馴染みの面々やジンたち「狩人」まで大活躍。夢と現実の狭間で揺れ動く人間の強さと弱さが、とても優しく描かれており、相変らずの物語の奥深さに感嘆の一言。花守りと化したタンダとの死闘は緊迫感溢れるが、決して殺すまいと誓い合うバルサとジンのタンダを思う気持ちに胸が熱くなった。
読了日:9月4日 著者:上橋菜穂子

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