2014年6月の読書メーター

2014年6月の読書メーター
読んだ本の数:17冊
読んだページ数:5777ページ
ナイス数:826ナイス

6月は海堂祭りでしたね。これまでに読んでいたバチスタシリーズと螺鈿迷宮から、ブラックペアン~スリジエのバブル三部作から極北篇、ジーンワルツ等の現代篇、その他の派生サイドストリーまで一気に既刊シリーズの読破へ挑んだ感じです。まだ、カレイドスコープの箱庭などが残っていますが、広がり続ける桜ノ宮サーガを堪能しました。

書店ガール (PHP文芸文庫)書店ガール (PHP文芸文庫)感想
本屋の雰囲気や待ち合わせの思い出など、書店という存在は何となく惹かれるものがあります。吉祥寺にある老舗のペガサス書店を舞台に、跳ねっ返りのお嬢様、怖いもの知らずの亜紀と、四十路の独身遣り手書店員で閉店を余儀無くされた店の店長を押し付けられた理子が、ぶつかり合いながらも店を救うべく奮闘する。POPの扱いや本の並べ方など本屋さんあるあるがリアル。バラバラだった書店員たちが段々と結束していく様子は読んでいて面白かったが、如何せん最初の方の女性同士のドロドロが怖過ぎて若干引く。男達は皆だらしな過ぎ(≧∇≦)
読了日:6月29日 著者:碧野圭
新装版 銀行総務特命 (講談社文庫)新装版 銀行総務特命 (講談社文庫)感想
帝都銀行の総務部特命担当の指宿調査役が銀行内の顧客名簿流出や行員のAV出演疑惑、裏金疑惑などの不祥事を暴いていく。とは言っても勧善懲悪の世直しもののようなスカッとしたドラマチックな内容ではなく、指宿修平の冷静沈着な人となりと途中で人事部から仲間に加わる唐木怜とのコンビも絶妙で、重厚で緊張感のあるミステリーといった印象。それにしても、こんなに特命が活躍しないといけないんだったら、帝都銀行の幹部役員がいなくなってしまうのではないかと心配になってしまう。銀行って本当に悪い人がいっぱい居るんですね(≧∇≦)
読了日:6月21日 著者:池井戸潤
玉村警部補の災難 (『このミス』大賞シリーズ)玉村警部補の災難 (『このミス』大賞シリーズ)感想
いつも警察庁の電子猟犬デジタルハウンドドッグこと加納警視正にこき使われる玉村警部補と田口先生が互いの境遇を慰め合いながら4つの事件を振り返る形式の短編集。一つ目の二十三区外殺人事件はイノセントゲリラの祝祭の文庫化にあたって内包されています。あと、青空迷宮事件は名称だけケルベロスのでも肖像で出てきたような記憶が。他にDNA鑑定と治験を絡めたトリックの四兆七千分の一の憂鬱と、死体歯科医というこれで一シリーズ書けそうな題材のエナメルの証言。ユナちんと桜宮の平和を守るタマちゃんに平穏の日々は訪れるのか。
読了日:6月20日 著者:海堂尊
ナニワ・モンスターナニワ・モンスター感想
浪速の地を舞台にスカラムーシュ彦根が八面六臂の暗躍ぶりを見せつける。現実に数年前に起きた、新型インフルエンザ発生時の擬似パンデミックによる集団パニックにも似た騒動を思い起こさせる内容と、裏で霞が関官僚(やはりその中心は斑鳩)が糸を引く陰謀を絡ませてサスペンス風に仕上げてあって面白い。物語終盤でようやく、大阪のアノ人を彷彿させる浪速の龍、村雨知事がスリジエの時のあの切れ者村雨秘書だと気付く。その村雨が思い描く日本再編の将来像に不可欠な彦根とカマイタチ鎌形。二人の両雄が並び立つ未来は無いのか?続きが気になる。
読了日:6月18日 著者:海堂尊
医学のたまご (ミステリーYA!)医学のたまご (ミステリーYA!)感想
中高生向けに書かれたという作品だがお馴染みの顔も多数登場。曾根崎ステルス伸一郎の息子である中学生の薫が潜在能力テストで全国1位になって飛び級で東城大学医学部に入学しレティノに関する画期的な論文を発表する!という奇想天外な設定だけれど、それら全てがハリボテなのが面白い。実際の薫は勉強が苦手な落ちこぼれ中学生。論文の捏造疑惑に巻き込まれるが、美智子や三田村などの同級生や、高校生になった佐々木アツシや桃倉に助けられ、自分の道を見出していく薫の成長が眩しい。伸一郎の薫への愛情と名言一杯の手紙のやり取りが印象的。
読了日:6月15日 著者:海堂尊
輝天炎上 (角川文庫)輝天炎上 (角川文庫)感想
冷泉、ハコを従えたラッキーペガサス天馬の視点から描いたケルベロスの肖像のもう一つのストーリーでもあり、螺鈿迷宮の続編として桜宮一族と東城大との因縁を描いた作品でもある。第二部の女帝の進軍では極北市で起きた医療事故の裏側の小百合が描かれ、第三部の透明な声では遂にあの人の消息と裏での動き(と意外な人との血縁関係)が明らかに。遠い昔の天城の夢を再び桜宮岬に運んできたマリツィアに導かれ、すべての怨念が集積されるかのようにケルベロスタワーは終焉の時を迎える。すみれへの想いを抱え、天馬はこの後何処へ向かうのだろう。
読了日:6月15日 著者:海堂尊
マドンナ・ヴェルデ (新潮文庫)マドンナ・ヴェルデ (新潮文庫)感想
「ジーンワルツ」を、曽根崎理恵の母であり、代理母を務めた山咲みどりの視点から描いた作品。こうして表と裏のように物語を見ることで、医師としての理恵の狂気とみどりの母としての逆襲の観点が明確になる。そして、相容れなかった母娘を繋ぎ直したヤンママのユミの力強さが救いになった。また、みどりの妊娠期間とともに移り行く季節と合わせて章頭を彩った料理の描写と合理主義者であるステルス伸一郎との手紙のやり取りを通して露わになっていく伸一郎の人間味が印象的。二人の母親に育てられることになった子供たちの将来が明るいことを願う。
読了日:6月14日 著者:海堂尊
ジェネラル・ルージュの伝説 (宝島社文庫) (宝島社文庫 C か 1-9)ジェネラル・ルージュの伝説 (宝島社文庫) (宝島社文庫 C か 1-9)感想
みんな大好き速水晃一のジェネラルルージュ伝説が誕生した城東デパート火災の舞台裏を描く「伝説-1991」から始まり、これまた「凱旋」の裏側を鉄血宰相三船事務長の視点で描く「疾風-2006」、そしてジェネラル無き後のオレンジ病棟を如月翔子と共に守り続ける佐藤ちゃんの想いに焦点を当てた「残照-2007」。いずれも海堂作品が生んだ速水晃一という稀有なキャラなしには成り立たない物語。後半は、海堂さんの自分史と各作品の執筆解説と裏話、さらに桜宮市年表と素人には難しかった医学用語辞典付きとサービス満点の1冊。
読了日:6月14日 著者:海堂尊
夢見る黄金地球儀 (創元推理文庫)夢見る黄金地球儀 (創元推理文庫)感想
花房さんも愛したボンクラボヤとふるさと創生1億円を活用して造られた黄金地球儀を展示する桜宮アクアリウム・深海館。桜宮市で父親の町工場を夫婦で手伝う平沼平介の前に久しぶりに現れたガラスのジョーこと久光穣治が持ちかけたのは黄金地球儀の強奪作戦。海堂作品にも関わらず医療を題材としないものの、共感覚を持つあの歌姫も加えた新生4Sエージェンシーも交えて、相棒のジョーと怪力の殿村アイと共に、黄金地球儀を巡る騙し騙され二転三転のコンゲームが繰り広げられます。まぁ正直な感想としては医療ものばかりの中の箸休め程度ですかね。
読了日:6月13日 著者:海堂尊
モルフェウスの領域 (角川文庫)モルフェウスの領域 (角川文庫)感想
先ずは「アツシ隊員、おかえりなさい、なのであります!」ナイチンゲールの沈黙で網膜芽腫により片目眼球摘出を受けたものの、その後の再発により治療法確立まで凍眠<コールドスリープ>することを選んだ当時9歳の佐々木アツシ。<モルフェウス>と呼び5年間見守り続けた日々野涼子。桜宮サーガの世界観の年齢矛盾をSFで解決してしまう海堂氏には恐れ入る。大海原を渡る名を持つあの医師のブラックペアンの後の消息を知れたのも嬉しい。ジーンワルツの理恵の夫、ステルスシンイチロウこと曽根崎博士の無敵ぶりなど盛り沢山すぎて書ききれない。
読了日:6月11日 著者:海堂尊
ケルベロスの肖像ケルベロスの肖像感想
遂に完成の時を迎えたAiセンター<ケルベロスの塔>を舞台に、過去のブラックペアン遺残事故や二十年前に天城の夢であったスリジエセンターを阻止したことに対する高階病院長の懺悔から始まり、そこへ螺鈿迷宮で燃え尽きたはずの桜宮一族の怨念までもが、桜宮全体を取り巻く呪いが一気に高階の元へ収束していく。田口、白鳥に彦根やシオン、姫宮、天馬、西園寺さやか、南雲、斑鳩とこれまでのオールスターキャスト総出演で過去の因縁との決着と桜宮の未来を占う闘いが繰り広げられる。それにしても田口先生、成長したねぇ。
読了日:6月8日 著者:海堂尊
ジーン・ワルツ (新潮文庫)ジーン・ワルツ (新潮文庫)感想
帝華大医学部の体外受精のエキスパートである<クールウィッチ>曾根崎理恵と、かつて速水と医鷲旗を巡って争ったライバル清川准教授を中心にした不妊治療と代理出産をテーマにした作品。出産と生命の神秘という大きなテーマを抱え、また一つ海堂ワールドが拡がってしまった。危機に瀕する地方の産科医療の現実を体現したマリアクリニックで繰り広げられた奇跡のような4組の出産シーンには、なんと女性とは強いものなのだと感嘆せざるを得ない。曾根崎と清川の向かう先も気になる。産科小児医療を巡る現状に対する問題提起が厳しく突き付けられる。
読了日:6月7日 著者:海堂尊
ひかりの剣 (文春文庫)ひかりの剣 (文春文庫)感想
医学部剣道部が目指す医鷲旗大会を舞台に、東城大の<猛虎>炎の緋胴、速水晃一と帝華大の<伏龍>清川吾郎の対決を描く。お馴染みの田口、島津との緩い学生生活や世良との臨床研修などの裏側も登場する。また高階の両大学を手玉に取った顧問ぶりと渡海が去った後の立ち去り稽古も鬼気迫るものがあった。ただ、それ以上に2年に渡る医鷲旗を巡る東條大と帝華大の争い、朝比奈や清川弟、崇徳館の天童や極北大の水沢たちとの対決を超えて対峙した速水と清川の闘いには身震いする程の迫力を感じました。清々しい青春小説として楽しめました。
読了日:6月7日 著者:海堂尊
スリジエセンター1991スリジエセンター1991感想
ブラックペアンシリーズ、またバブル三部作とも言われるシリーズの最後を飾る三作目。神の手を持つ天才外科医天城が夢見るスリジエセンターの設立に後の東城医大病院長であるクイーン高階が立ちはだかる。まだ医学生の彦根やじゃじゃ馬速水の入局、そしてジェネラルルージュ伝説の誕生となる城東デパート火災事故の発生など見所も豊富。後の物語を知っている読者にはスリジエセンターが実現していないことは既定の歴史なのだけれど清廉なまでに己の夢に忠実であった天城のことは決して忘れないだろう。海堂作品の中でも屈指のシリーズだと思う。
読了日:6月5日 著者:海堂尊
ブレイズメス1990 (講談社文庫)ブレイズメス1990 (講談社文庫)感想
ブラックペアンに続いて一気に読了。2年後の物語はフランスのニースからモナコ公国まで舞台を広げ、それにふさわしくまたもや一人の強烈なキャラの持ち主、世界でただ一人ダイレクト・アナストモーシスという術式をこなす天才心臓外科医の天城雪彦が登場。世良がジュノ(青二才)と呼ばれるのはまだしも、前作あれだけ暴れまわった高階でさえ子供扱い。日本発となる公開手術の成否や心臓専門病院となるスリジエ・ハートセンターの行方など息もつかせぬ怒涛の展開。それにしても良いところで終わる。世良と天城や高階の今後が気になって仕方がない。
読了日:6月2日 著者:海堂尊
ブラックペアン1988(下) (講談社文庫)ブラックペアン1988(下) (講談社文庫)感想
東城医大の総合外科学教室を率いる天才外科医の佐伯教授と天下の帝華大からの刺客、小天狗こと高階講師に、父親の代から佐伯との因縁を持つ凄腕の渡海、若さゆえの正義感を持った世良。それぞれが正しさを追い求め、ぶつかり合う様がシンプルなストーリー構成ゆえに、ガン告知などの当時の医療が抱えていた問題と合わせてすんなり入ってきました。後の姿や考えを知っているからこそ、若かりし頃のそれぞれの思いがぶつかった挙句のこの結末には感慨深いものがある。あと、例の医学生三人の手術見学とレポートも個性が出ていて面白かった。
読了日:6月1日 著者:海堂尊
ブラックペアン1988(上) (講談社文庫)ブラックペアン1988(上) (講談社文庫)感想
極北シリーズでお馴染みの世良先生が東城医大の医局に入りたての新米外科研修医時代を描く。先に極北シリーズを読んでしまったのをちょっと後悔していたが、逆にこんな初々しい頃もあったのかと思える利点もあったかもしれない。20年後に桜宮を騒がせることになる面々、高階講師や黒崎助教授、まだ学部生の速水、島津、田口の三人、藤原婦長と猫田主任、そして同じく一年目の花房看護婦など。世良先生にもこんなに真っ直ぐに外科医だった頃があったんですね。それにしても上下巻にする意味が全く感じられない厚さと文字の大きさです。
読了日:6月1日 著者:海堂尊

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