2014年5月の読書メーター

2014年5月の読書メーター

読んだ本の数:16冊
読んだページ数:5490ページ
ナイス数:1064ナイス

先月も主に図書館予約本がいいペースで回ってきたのでよく読むことができました。終物語(下)や話題の白ゆき姫殺人事件、終盤は伊坂さんが多めでした。他にもリカーシブルやラブコメ今昔、少女や真夜パンなども面白かった。

砂上のファンファーレ砂上のファンファーレ感想
現在公開されている映画「ぼくたちの家族」の原作で、文庫版では映画タイトルと同名に改題統一されているようです。作中の、いつでも家庭の方を向いている平成的父親という表現に時代を感じます。突然母親を襲った病魔をきっかけに、頼りない父親と息子二人が母親のために奔走する中で家族として再生していく物語です。おそらく題材としては素晴らしいと思うのですが、展開がチグハグでバタバタした印象で、もっと盛り上げて泣かせられる筈なのに惜しいなぁという感想。とにかく次男の俊平がいい味を出していて、きっと映画は傑作な気がします。
読了日:5月30日 著者:早見和真
首折り男のための協奏曲首折り男のための協奏曲感想
首折り男の、と言いながら実際に首折り男が関係する話はいずれもストーリセラーに収録されていた「首折り男の周辺」と「合コンの話」の他には「濡れ衣の話」ぐらいで、あとは黒澤さんの話だったような気がしますが、一見取り止めなく短編集に見えて何処か繋がりを感じさせるところが伊坂さんならではでしょうか。黒澤さんの味がよく出ていて、水兵リーベ僕の舟なんかはとても上手くまとまっていて、独特の雰囲気が面白い。最後の合コンの話は、よくもまぁこんな何気ない合コンの一風景を何だか素敵風な物語に仕立て上げられるものだと感心します。
読了日:5月28日 著者:伊坂幸太郎
ガソリン生活ガソリン生活感想
一人称”僕”は”緑デミ”ことマツダの緑のデミオ。車達の愉快な日常と、運転する人間達の巻き起こす事件が絡んだまるで伊坂版機関車トーマス(車版)のようなお話。同じマツダながら我が愛車のRXー8がほんのチョイ役でしか登場しなかったのがちょっと残念ですが、個性的な車達が本当にこんな風に停車中やすれ違いざまに互いに会話しあっていると想像したらきっと面白いだろうな。伏線回収のスッキリ感とエピローグのほっこり感もあって非常に爽やかな読後感。大事に車に乗らなければ「まったくうちの主人は…」なんてぼやかれてるかもしれない。
読了日:5月24日 著者:伊坂幸太郎
終物語 (下) (講談社BOX)終物語 (下) (講談社BOX)感想
我らがアイドル八九寺真宵との再会を祝して乾杯!と思ったらそこは何と地獄という状況に戸惑いながら始まった「まよいヘル」。久しぶりのきちんとした登場すぎて戦場ヶ原さんのキャラぶれまくりの「ひたぎランデブー」。そして、ファイナルシーズンの事実上のラストを飾るのは忍野扇との決着をつける「おうぎダーク」。最後に相応しく、千秋楽の様相で親切丁寧な伏線回収の説明付きで色々忘れてる身には助かります。遂に迎える物語の終わり、そして阿良々木暦の青春の終わり。さて、最終ならぬ再終巻との「続・終物語」はどんな内容になることやら。
読了日:5月24日 著者:西尾維新,VOFAN
PKPK感想
「PK」はA,B,C…、「超人」は1,2,3…、「密使」は私と僕、といったように一人称や視点を切り替えながら、相互に関連しあった壮大なバタフライ効果のようなお話。特に密使はタイムパラドックスや平行世界の存在などを絡めており、一見取っ付きにくさもあるものの全体としての一貫性があるためわかりにくくはない。人物相関をメモしながら読むと繋がりがわかりやすくなってより楽しいと思われます。全体のテーマとして言いたかったのは”臆病は伝染する。そして、勇気も伝染する”でしょうか。未来はいつでもその手の中にある。
読了日:5月23日 著者:伊坂幸太郎
極北ラプソディ極北ラプソディ感想
前作となる極北クレイマーを読んだのが約1年前で余り細かい所を覚えてないのがちょっと痛かった。最後に少し弱気を見せたのが少し頂けませんが、世良医師の確固たる意思による自治体の破綻と救急医療への警鐘、ついでに馴れ合いの記者クラブ制度への突っ込みは容赦ない。日本三分の計どころか北海道発日本統一の野望の大風呂敷には恐れ入る。見所は北の地でも相変わらず傍若無人なジェネラル速水とドクターヘリパイロット大月&CS越川のプライドがぶつかるガチンコ飲み比べか。それにしても花房師長、貴女の居場所がまさか其処だったなんて…
読了日:5月20日 著者:海堂尊
少女 (双葉文庫)少女 (双葉文庫)感想
湊さんお馴染みの独白形式ながら、*が由紀、**が敦子と、二人の女子高生の視点を切り替えながら物語は進んでいく。いわゆる「少女」と言われる最も多感な時期の、情動的で短絡的な反面冷酷で残酷とも言える行動に戸惑いを覚え、もしこれが一般的だというのであれば、理解することは到底叶わないと思ってしまう。物語は初めの遺書<前>、序章から仕掛けが施されており、複雑に(都合良く?)人の中にある悪意と報いが絡み合うまさに因果応報の展開。読み終えての感想は、冤罪が怖くてますます満員電車には乗れなくなりそうです(≧∇≦)
読了日:5月18日 著者:湊かなえ
さいはての彼女 (角川文庫)さいはての彼女 (角川文庫)感想
4人の女性(凪を入れると5人かな)の出会いと再生の旅を描いた4つの短編集。とりわけ一人旅というのは社会的な肩書も普段の自分も関係なく、非日常のなかで自然と旅先で出会う出来事や人々とまっさらな一人の自分として対峙せざるを得ない。相棒のハーレー「さいはて」と共に爽やかに全国を駆け抜けるナギの風のような生き方が気持ちいい。バイク乗りの連帯感というか、出会ってすぐに打ち解けられる感じがよく伝わってきます。そして、ナガラがハグに宛てた「人生をもっと足掻こう」のエールはきっと多くの読者(特に女性)を勇気づけるだろう。
読了日:5月17日 著者:原田マハ
白ゆき姫殺人事件 (集英社文庫)白ゆき姫殺人事件 (集英社文庫)感想
本当に人の噂話や真実が歪曲されていく怖さと言うか、一見悪意の無い匿名という衣に隠れた醜悪さをしみじみと感じます。現代版の藪の中のように、SNSなどのネットや雑誌を舞台としながら、週刊誌のフリー記者の赤星(ハンドルネームはRED_STAR)からのインタビュー形式で進んでいき、取材を受ける人によって全く印象が変わっていく城野美姫の人物像に翻弄され、最後に明かされる事件の真相にも驚かされます。なお、最後にまとめて掲載してある資料は各章毎に随時参照しながら読むべきで、少し読み方を間違えていたようです。
読了日:5月17日 著者:湊かなえ
リカーシブルリカーシブル感想
血の繋がらない弟と母と共にとある町へ引っ越してきたハルカ。入学した中学校で友人となったリンカ(少し前に読んだstoryseller2に収録されたリブートではリンコ)をはじめとする町の人達は何かを隠している怪しい雰囲気が漂う。町のために人身御供として代々身を捧げ、過去と未来の記憶を共有するというタマナヒメ伝説と弟のサトルが見せる予知能力を思わせる既視感によって輪廻転生的な伏線がこれでもかと張られるため非常に先が気になる。ラストは成る程という展開だが、リブートが手元に無く関係が不明なのでモヤモヤが残る。
読了日:5月16日 著者:米澤穂信
珈琲店タレーランの事件簿 3 ~心を乱すブレンドは (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)珈琲店タレーランの事件簿 3 ~心を乱すブレンドは (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)感想
シリーズ3作目。今回はバリスタ大会で起きた異物混入事件を舞台にした長編。やはり巻頭に見取図があるとミステリらしくワクワクしますね。でも、会場となる公共ホールのたかが準備室に密室設定のためとはいえ入室管理用のカードロックシステムがあるとか、美星さんがようやく本選に辿り着いたはずの大会を捨てて謎解きに挑むとか、出場者の一人でもある美星さんを主催者が事件の全容解明の全権を委任するとか、設定と展開がチグハグな印象。あと、ラストで我らが美星さんがアオヤマ氏に副賞をねだるなんて凶行は決して許されないヽ(`Д´#)ノ
読了日:5月11日 著者:岡崎琢磨
白銀ジャック (実業之日本社文庫)白銀ジャック (実業之日本社文庫)感想
経営の厳しいスキー場を舞台に、ゲレンデに仕掛けられた爆弾を巡ってお客全員を人質に取った身代金のやり取りが繰り広げられます。結構ライトな内容で、犯人の真相やラストの展開も薄々途中で読めてしまったりしますが、疾走感もあって楽しく一気に読んでしまいました。スキー場の経営の状況やスキー場に頼るしかない地元産業の事情、スキーやスノーボードなどの技術的表現が妙にリアルでしたが著者の趣味の反映でしょうか。それと今夏にドラマが放送されるそうです。映画じゃなくてテレビドラマとは意外ですが、確かに映像向きの作品でしょうね。
読了日:5月11日 著者:東野圭吾
ガリレオの苦悩 (文春文庫)ガリレオの苦悩 (文春文庫)感想
今更ながらガリレオシリーズを読んでいるのですが、ここへ来てテレビドラマで柴咲コウ演じる内海薫も登場し、各登場人物の人物造形がテレビのキャストと完全に一致してきた気がします。タイトルのとおり「操縦る」では恩人の罪に苦悩する姿が描かれるなど、初期の頃より人間味の出てきた湯川准教授の科学的なトリック解明は相変わらずユニークです。特に最後の「撹乱す」はいかにもテレビ向きな感じで、五つの短編のいずれも軽快に楽しめました。しかしながら、「指標す」の母娘に対する草薙の態度に容疑者xの献身の暗い残像を感じました。
読了日:5月10日 著者:東野圭吾
真夜中のパン屋さん 午前2時の転校生 (ポプラ文庫 日本文学)真夜中のパン屋さん 午前2時の転校生 (ポプラ文庫 日本文学)感想
お馴染みのパン屋さんに腹話術のアンジェリカと共に突然現れた謎の転校生の美作孝太郎と天才脳外科医である父親の美作元史。そして自称魔法使いの安倍ちゃんこと安倍医師。どうやらこだまの異母兄でもある孝太郎を始めとするいかにもクセのある面々が引き起こす事件に巻き込まれる希美と暮林と弘基たち。今回は何と言っても魔法使い安倍ちゃんのキャラと一見荒唐無稽なようで実に真剣に真理を突いた言動に振り回されて魔法をかけられた気分。そこへ希美の過去の記憶の謎と母親の登場まで絡んでくるラストの引きによって次巻がとても気になります。
読了日:5月9日 著者:大沼紀子
ラブコメ今昔 (角川文庫)ラブコメ今昔 (角川文庫)感想
お得意の自衛隊を舞台とした様々な恋愛模様を描く6つの短編集。相変わらず自らの使命に命を賭して真摯に向き合う自衛隊員という人達への有川さんの愛情とリスペクトぶりが半端じゃない。表題作であるラブコメ今昔の、今村二佐からの矢部二尉への訓辞も若い隊員の国防を担うことへの覚悟を問うもの。ラストまで千尋と吉敷が付き合っていると読めない辺り、まだまだ有川読者として己の未熟さを痛感。他の話も楽しく読むことができました。そして「秘め事」で宮崎の身に起きた悲劇と水田三佐の娘を思う気持ちには思わず涙せずにはいられませんでした。
読了日:5月3日 著者:有川浩
さよならドビュッシー 前奏曲(プレリュード)~要介護探偵の事件簿 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)さよならドビュッシー 前奏曲(プレリュード)~要介護探偵の事件簿 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)感想
本編である「さよならドビュッシー」に主人公の遥やルシアの祖父として登場する香月玄太郎が要介護探偵として活躍する五つのエピソードからなるミステリ集。とにかく警察などの権力的なものには滅法強い玄太郎のキャラが強烈ですが、本編だけではもったいないキャラなので活躍の場を作ってあげたくなる気持ちはわからなくもないのですが、なにせ本編冒頭であっけなく死んでしまうことがわかっているだけに何とも複雑な心境。そういう訳で岬先生との出会いなども描かれますが、やや後付けのような印象。ただそれぞれの話は創意的で面白かったです。
読了日:5月2日 著者:中山七里

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