2014年1月の読書メーター

2014年1月の読書メーター

1月も年始から結構忙しかった割には案外読むことができました。やはり下町ロケットが一番印象深いですが、そのほかにも図書館シリーズとかサヴァイヴ~キアズマとか、恋文の技術とか、まよパンとか、なかなか楽しいラインナップでしたね。

読んだ本の数:19冊
読んだページ数:6143ページ
ナイス数:1060ナイス

チルドレン (講談社文庫)チルドレン (講談社文庫)感想
それぞれ異なる時期に単独で雑誌に掲載された五つの短編からなる連作短編集。登場するのは家裁調査官の陣内と武藤と、大学時代の友人の鴨居、銀行強盗事件に一緒に巻き込まれた盲目の永瀬と盲導犬のベス、永瀬の彼女の優子。とにかく陣内の独特の正義感を持ったキャラの魅力が強烈だが、物語の時期も学生時代と10年後の現在を行ったり来たりしながら絡み合わせて一つに収斂していくいつもの感じが心地いい。陣内の台詞を聞いていると何ていうことのない日常の中にも特別な奇跡があるのかもしれないなんて思わされる。軽く読めてかつ楽しめる。
読了日:1月30日 著者:伊坂幸太郎
真夜中のパン屋さん 午前1時の恋泥棒 (ポプラ文庫)真夜中のパン屋さん 午前1時の恋泥棒 (ポプラ文庫)感想
まよパンシリーズ第2弾。人物紹介的にいろんなエピソードで構成されていた1巻と違い、今度は全編を通して弘基の中学生時代の元カノである佳乃を巡るお話。各章の構成も上手い(特に斑目氏の変態全開の妄想恋愛は清々しさを通り越してもはや格好いい!)が、要所要所に引きのある謎が配置されていて、とにかく読ませる展開となっている。冒頭の「救うことは、救われることに通じている」という台詞のとおり、救いがテーマとなっていて、笑顔の増えた希美とこだまの姿も楽しそうでとてもいい。果たして自分は、誰かの傘になり得るのだろうか。
読了日:1月29日 著者:大沼紀子
カナリヤは眠れない (ノン・ポシェット)カナリヤは眠れない (ノン・ポシェット)感想
身体の声を聞くことができるちょっと変わり者の整体師の合田先生を探偵役に、忙しすぎて文字通り首が回らなくなった週刊誌記者の小松崎雄大を語り手としたミステリ作品。とはいってもミステリ要素はかなり薄めで、買い物依存や摂食障害、セックス依存など様々な依存を抱えた女性達の心が傷つくのはとても悲しいことで、そうしたカナリヤたちの声を真摯に聞こうとする合田先生の厳しくも優しく寄り添う姿勢が心に残る。そして、人間は身体の行けるところまでしか行けないという言葉に、自分の身体を労らなくてはとしみじみ反省。
読了日:1月26日 著者:近藤史恵
あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。(上) (MF文庫ダ・ヴィンチ)あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。(上) (MF文庫ダ・ヴィンチ)感想
TVアニメ本編と劇場版では号泣しました。映像では動きで表現できる分、小説では細やかな描写が必要になってくるところで、ややキャラごとの会話の説明の不足やシーンごとの描写が不親切な分、未見の人には厳しいかなと感じるところはあるものの、個々の人物の視点と想いが描かれていて原作ファンには嬉しい内容です。下巻では、やはり涙腺の崩壊は間違いないことでしょう。
読了日:1月26日 著者:岡田麿里
晴れた日は図書館へいこう ここから始まる物語 (ポプラ文庫ピュアフル)晴れた日は図書館へいこう ここから始まる物語 (ポプラ文庫ピュアフル)感想
晴れた日は図書館へ行こうシリーズ第2弾。陽山市の季節も春夏から秋冬に変わり、本好きの小学五年生のしおりが出会う図書館で起きる謎も前巻と比べるとややボリュームアップしたような感じ。単なる謎解きではなく、周りの人々との交流を通じてしおりの成長を感じられる構成が好感が持てます。長い年月を経てようやく本という形になった「幻の本」の話が特に印象に残りました。そして、思いがけず再開した父親とのぎこちない会話には苦笑いですが、「ここから始まる物語」というサブタイトルに込められた「しおり」という名付けの意味も素敵でした。
読了日:1月25日 著者:緑川聖司
晴れた日は図書館へいこう (ポプラ文庫ピュアフル)晴れた日は図書館へいこう (ポプラ文庫ピュアフル)感想
お気に入りの図書館が身近にある生活は幸せなことです。読書好きなら誰しもが何処かご贔屓の図書館があることでしょう。ちょっと大人びた小学五年生のしおりちゃんが主人公の、図書館で起こる出来事、いわゆる日常の謎とき系のお話。最近よく見る表紙絵にそそられる系と思いきや、元は10年前に出版された児童書のようで、かなりライトに読むことができます。ホンワカした雰囲気としおりちゃんの健気さに癒されます。図書館の本を大切に扱って欲しいという著者の想いが感じられ、なんだか用事はなくても図書館に出かけたい気分になる一冊です。
読了日:1月25日 著者:緑川聖司
夜行観覧車 (双葉文庫)夜行観覧車 (双葉文庫)感想
高級住宅街であるひばりヶ丘で暮らすエリート一家の高橋家で発生した家庭内殺人事件を巡り、向かいに住む遠藤家、斜向かいの小島さと子らの様々な視点からいつもながらの多角的、立体的に物事を見つめ、真実とそこに隠された家族模様を明らかにしていく。家族とはいえ、家の外から見える風景と、中の家族一人ひとりから見えるもののあまりの違いに、入念で確かな人物造形を感じる。と同時に登場人物の嫌な所を通して自らの心のうちの醜さを覗き見られているような気がして居心地の悪さを感じざるをえない。ラストは少しもやもや感が残るかな。
読了日:1月23日 著者:湊かなえ
陽だまりの彼女 (新潮文庫)陽だまりの彼女 (新潮文庫)感想
カバー装画がとても印象的で思わず手に取ってしまいたくなる本書。中学生以来の同級生との突然の再開という運命の出会いから、駆け落ちの末のとてもベタで甘い新婚生活が描かれていくが、妻である真緒には13歳以前の記憶がないことや、所々にちりばめられた謎が読者の不安を煽る。とにかく、愛くるしい真緒のキャラとそれをガッチリと受け止める浩介のコントのような楽しいやり取りも魅力だが、何といってもオチに尽きるので未読の方はくれぐれもネタバレにお気を付けを。恋愛小説というよりいろんな愛情に溢れた現代のおとぎ話のようなお話。
読了日:1月22日 著者:越谷オサム
キノの旅〈7〉the Beautiful World (電撃文庫)キノの旅〈7〉the Beautiful World (電撃文庫)感想
今回は、他国や通り道にある人々への迷惑を顧みず動き続ける「迷惑な国」、安楽死について考えさせられる、決して治療を行わない国のお話である「冬の話」、狂気の地下室のインパクトが強すぎるのと、”ししょう”のコミカルな面が垣間見える「森の中のお茶会の話」、優しい嘘に溢れた「嘘つき達の国」など。もちろん、キノが”キノ”となって旅をするようになった始まりの物語である「何かをするためにa・b」が最も印象的。そして、毎回自由すぎる「あとがき」はなんとついに巻頭カラー・・・。
読了日:1月19日 著者:時雨沢恵一
狼と香辛料〈5〉 (電撃文庫)狼と香辛料〈5〉 (電撃文庫)感想
いつもながら、行く先々の町における土地土地の料理やお酒が非常に美味しそうに描かれており、それを気持ちいいぐらいに次々と平らげていくホロの食いっぷり、飲みっぷりも本作の魅力ですね。ホロの伝承が残る北の街レノスを訪れたホロとロレンスが出会ったのは没落貴族の娘であることを隠して商人として大きな取引を目論むエーブ。相変わらず、商人同士の駆け引き満載の会話のやり取りも楽しいが、旅を笑顔で終えようとするホロの決意と二人の関係の行く末に物語の転機を感じさせつつも、取りあえず二人の旅が続くことになってホッとしています。
読了日:1月19日 著者:支倉凍砂
狼と香辛料〈4〉 (電撃文庫)狼と香辛料〈4〉 (電撃文庫)感想
いつもホロやロレンスと一緒に異国を旅しているような感覚を味わうことができるこのシリーズが好きです。ホロの故郷のヨイツを探して北の田舎村のテレオにやってきた二人は若い少女の司祭エルサと粉挽きのエヴァンと出会う。そこで、テレオ村とエンベルクとの不平等契約に端を発する毒麦の混入騒ぎと異教の神を巡る騒動に巻き込まれる。今回もホロの可愛さと二人のやり取りが微笑ましく、特にエルサとエヴァンの仲睦まじさを羨ましがる様子がとても印象に残りました。
読了日:1月18日 著者:支倉凍砂
恋文の技術 (ポプラ文庫)恋文の技術 (ポプラ文庫)感想
これはわかりやすい森見さん。京都からクラゲの研究のために能登へやってきた大学院生の守田一郎くんがひたすら書き綴る手紙のみによって構成される書簡体小説。とにかく阿呆学生のおっぱいへの想いが溢れている。基本的には守田氏からマシマロ小松崎や大塚女史、妹の薫、間宮少年や小説内小説家の森見氏などへの手紙という一人称的視点から描かれているにも関わらず、遠く離れた京都の情景や相手からの返信の手紙の内容を立体的に感じさせる文体はお見事。恋文の技術は全く身につきませんでしたが、とても楽しく読ませていただきました。
読了日:1月16日 著者:森見登美彦
キアズマキアズマ感想
自転車ロードレースを題材にした話ですが、チカも石尾も登場しません。前作までとの繋がりとしては唯一、チーム・オッジのマネージャーとして赤城さんがワンシーンだけ登場しますが、舞台を大学の自転車部に移した全く独立した話となっています。大学に入学して自転車を始めた正樹と先輩の櫻井を中心に、これまでとは違う素人からの成長を描くため、自転車競技へ一緒にのめり込んで行く感覚を味わいます。兄の死、親友の部活中の事故、共に過去に痛みを抱える二人が、それぞれのやり方で過去を乗り越えようとする姿は正に青春小説として清々しい。
読了日:1月13日 著者:近藤史恵
下町ロケット (小学館文庫)下町ロケット (小学館文庫)感想
これは文句なしに面白い!かつて宇宙技術開発機構の技術者でありながらロケットの打ち上げに失敗した過去を持ち、亡くなった父の跡を継いで佃製作所という町工場を経営する佃航平が主人公。技術者としての想いを抱えながら現実の中小企業の経営に奔走する佃の姿、銀行からの出向である殿村の悩み、営業と技術開発の確執、若手職員との溝、ナカシマ工業との特許訴訟、そして大企業である帝国重工への部品供給への壁、すべてがロケット打ち上げ成功への布石となっている。殿村さんの啖呵が最高に格好いい。佃品質、佃プライドに万歳三唱!
読了日:1月12日 著者:池井戸潤
仔羊の巣 (創元推理文庫)仔羊の巣 (創元推理文庫)感想
ひきこもり探偵シリーズの2作目であることどころかミステリということすら知らずに読み始めてしまった。人のいい坂木くんと鳥井の共依存のような危うい関係や、ぞんざいかと思えば子供っぽくなる鳥井のキャラもあって、とても不思議な雰囲気を持つ作品でした。そんなひきこもり探偵が人とのコミュニケーションに問題を抱えているとは思えない洞察力によって解決するのは人が死ぬような事件ではなく、同僚の行動の謎や親子の確執など、人の感情や関係にまつわる事件ばかり。栄三郎さんの「観念としての拳、げんこつの正しい使い方」も良かった。
読了日:1月9日 著者:坂木司
四畳半王国見聞録四畳半王国見聞録感想
京都の四畳半を舞台に果てしなく繰り広げられる妄想と夢想の虚実綯い交ぜの森見ワールドは非常に難易度が高い。他作品の登場人物も所々に顔を見せるだけに、少なくとも四畳半神話体系を先に読んでから手に取るべき作品だろう。もはや奇々怪々な四畳半世界と阿呆神や、気を抜いているわけでもない筈なのに誰が語り手なのかすらわからなくなってしまうような難解極まりない文章を楽しめないわけではないが、読み終えた今でもさっぱり意味はわからないのである(>人<;)
読了日:1月7日 著者:森見登美彦
サヴァイヴサヴァイヴ感想
サクリファイスからエデン、その過去と未来を主に赤城やチカの視点で描く。ロードレースの団体競技としての魅力と面白さもさることながら、基本的にストーリセラー等に収録された既刊の短篇集ですが、若かりし頃のエースを狙う石尾とそれを支える赤城の思いや、チカがヨーロッパに渡ったあと日本でもがく伊庭の姿、ミッコと共にポルトガルに渡ったあとのチカの姿が、物語の隙間を埋めて行くかのよう。しかし、ここまでくると、チカのロードレース選手としての到達点へ至る本筋の物語を長編で読みたい!どうかお願いしますm(_ _)m
読了日:1月5日 著者:近藤史恵
眠れないほど面白い『古事記』: 愛と野望、エロスが渦巻く壮大な物語 (王様文庫)眠れないほど面白い『古事記』: 愛と野望、エロスが渦巻く壮大な物語 (王様文庫)感想
現存するわが国最古の書物であり、イザナギイザナミの神々から始まる国の成り立ちと系譜を綴った古事記。本書はそれらを現代風にわかりやすい物語として噛み砕いてある。そこに描かれているのは神々や歴代天皇の情熱的な恋と大胆な野望に満ちたドラマ。とにかく、国づくりの為の成り成りて成り合わないところが成りあまったところを刺し塞ぐ話と、謀略に満ちたとても人間臭い権力争いの連続なんて言ったら不遜の極みかな?長い神々の名前には苦戦するが、国生みや天の岩戸やヤマタノオロチ退治など馴染みのあるものも多く内容はわかりやすい。
読了日:1月3日 著者:由良弥生
ヤッさん (双葉文庫)ヤッさん (双葉文庫)感想
ありきたりな身の上話の末にホームレスになったタカは、ある日同じホームレスながら築地や有名料亭などに自由に出入りして賄いを食べ、そこで顔のように振る舞う銀座のヤスことヤッさんに出会う。実はヤッさんは情報屋として仲買人や料理人を繋ぐ役割を果たすことから重宝されているのだが、ホームレスとしての矜恃を持って暮らしている。昨今の有名ホテルの偽装問題も本作に登場する料理人のように真摯な態度を持ち、ヤッさんが居たならば決して起こらなかっただろうと思う。タカの成長やヤッさんの啖呵が心地よく、読むと元気になれる一冊です。
読了日:1月1日 著者:原宏一

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