2015年2月の読書メーター

2015年2月の読書メーター
読んだ本の数:10冊
読んだページ数:3553ページ
ナイス数:642ナイス

政と源政と源感想
つまみ簪職人の源二郎と元銀行員で堅物の国政。二人合わせて146歳、幼馴染の政と源。三浦さんでいうとまほろの行天と多田とはまた違った名コンビ。そこに簪職人見習いの徹平と美容師のマミさんを加えた、下町の風情たっぷりの人情物語。花江さんと源さんの駆け落ちの昔話がいいですね。しかし、如何にも職人然として気っぷの良い源二郎に比べて、全く国政は「ひがみっぽいのがいけねえ」や。仕事一筋に生きた挙句、定年後に愛想を尽かされ、娘共々家を出て行かれた国政の悲哀ぶりが、何だかスカッとした読後感を与えてくれない(>_<)
読了日:2月22日 著者:三浦しをん
太陽の塔太陽の塔感想
相当なまでに妄想を拗らせる森本と飾磨、高藪、井戸たち愛すべき阿呆どもが、有り余る男汁を迸らせながら大学生活を過ごす京都。1年前に振られた水尾さんへの果てしない妄想という名の研究に没頭する森本と、「ええじゃないか騒動」によってクリスマスへの反抗を企てる飾磨の崇高なる精神に感服せざるを得ない。夢の中に現れる太陽の塔の圧倒的な存在感に敬意を抱きながら、くだらないことことばかり思い出される大学生活に想いを馳せつつ、森見ワールドの原点を楽しませて貰いました。
読了日:2月21日 著者:森見登美彦
アイネクライネナハトムジークアイネクライネナハトムジーク感想
「出会い」をテーマにした連作短編集。各話を通して、世代を超えて人物関係が関連しており、あ〜これがあの話のあの人(またはその子どもだったりする)か〜と繋がりを感じながら読むのも本書の楽しみの一つ。恋愛ものが中心で、人が死んだり物騒なことが起きたりしませんが、さり気ない日常に見せかけつつ、軽妙な台詞とウィットの効いた語り口で楽しませながらも、示唆に富んだ教訓めいたところを、あくまでライトに恩着せがましくなることなく読者に感じさせるのが本当に上手いですね。元気がない時に読むと勇気が湧くかもしれません。
読了日:2月19日 著者:伊坂幸太郎
流星ワゴン (講談社文庫)流星ワゴン (講談社文庫)感想
人は誰しも、あの時こうすれば良かったのではないかという後悔をしないように精一杯生きているもの。実際にはそんなことを未然に防げる訳もなく突然に突き付けられた現実を前にやはり後悔するしかない。もし過去に戻ってあの時をやり直せるのなら?カズの前に突然表れた、5年前に事故で亡くなった橋本親子のワゴン。乗り込んだ先で出会ったのは死の床にある仲違いした父親の25年前の姿。同い年のチュウさん、妻の美代子や引きこもりの息子の広樹と向き合い、壊れてしまった家族関係や後悔だらけの現実を取り戻せるのか。身につまされ過ぎて辛い。
読了日:2月15日 著者:重松清
忍びの国 (新潮文庫)忍びの国 (新潮文庫)感想
百地三太夫、下山甲斐ら、忍びたちの国、伊賀。その伊賀一の凄腕の忍びである無門。後の石川五右衛門である文吾。攻め入るは伊勢の国を治める信長の嫡男である信雄率いる、豪傑日置大膳、長野左京亮、柘植三郎左衛門。登場人物だけでもワクワクするが、「天正伊賀の乱」の史実を背景にした歴史小説であり、痛快無比な忍法帳でもある。伊賀の忍びたちの我が子の命も厭わぬ人心を操る謀略の奥深さには恐れ入る。忍び軍団と織田信雄軍の戦闘も迫力がある。無門の忍びの術の凄さが極まっているが、お国に全く頭の上がらない姿とのギャップも面白い。
読了日:2月14日 著者:和田竜
楽園のカンヴァス (新潮文庫)楽園のカンヴァス (新潮文庫)感想
ニューヨーク近代美術館のアシスタントキュレーターのティム・ブラウンと気鋭の若手研究者であるオリエ・ハヤカワ。スイスバーゼルに住む謎のコレクターのバイラーに突然呼び出された二人に与えられた使命は、ルソーの名作である「夢」に酷似した「夢をみた」の真贋判定。その方法は著者不明の謎の文書を1日1章ずつ読み進み、7日目に真贋を講評すること。そして勝者には絵の所有権が渡される。美術史を深く掘り下げた圧倒的な筆力に、登場する作品を検索しながら読む手が止まらない。ヤドヴィガの夢の続きを観に美術館に行きたくなります。
読了日:2月11日 著者:原田マハ
光圀伝光圀伝感想
まさに孤高の虎、詩歌と文事の天下を目指し、何より大義に生きた水戸光圀の生涯を、光圀伝というシンプルなタイトルのとおり見事に描き切った重厚な物語。その生涯は波乱万丈にて、常に死の看取りと隣り合わせでした。父の頼房、兄の頼重、莫逆の友である読耕斎、生涯忘れることのない伴侶の泰姫、義を通し世子とした兄の子の綱方、第二の父であり師匠の朱舜水、誰より信頼していた紋太夫。そしてその光圀に最期まで寄り添い続けた左近。光圀が追い求めた史書が与えてくれるのは、連綿と続く人々の人生であり、そこに人が生きた証である。
読了日:2月11日 著者:冲方丁
のぼうの城 下 (小学館文庫)のぼうの城 下 (小学館文庫)感想
いよいよ戦が始まった。佐間口を守るは”漆黒の魔人”正木丹波、下忍口には毘沙門天の化身、酒巻靭負、長野口には柴崎和泉。忍城の侍大将たちの活躍により緒戦をものにする。第2戦、三成がとった作戦は後に戦国史に残る水攻め。丹波や敵の総大将である三成が感じるのぼう様こと長親の大将としての将器とは。いざという場面で長親が見せる常識では測れない胆力が水没寸前の忍城を救う。開城の後も、あっさりと再戦の覚悟を言いのけてしまう場面は痛快です。最後まで恵まれなかったものの、三成もまた傑物でした。甲斐姫の覚悟もまた清々しい。
読了日:2月7日 著者:和田竜
のぼうの城 上 (小学館文庫)のぼうの城 上 (小学館文庫)感想
のぼうとは”でくのぼう”のこと。普段、家臣どころか領民にまで、そう呼ばれる忍城の城代の成田長親。天下統一を前にした秀吉の命により、石田三成率いる2万の軍勢に取り囲まれ絶体絶命の窮地に立たされた忍城。所々に史跡や文献の紹介を交えたルポのようでもある新鮮な形式のエンターテイメント時代小説。。「それが世の習いと申すのなら、このわしは許さん。」戦うことを決めた長親に付き従う正木丹波や柴崎和泉、酒巻靭負ら、個性的な武将たちがいかに三成を迎え撃つのか。圧倒的戦力差のなか、逆襲の決戦は下巻へ。
読了日:2月7日 著者:和田竜
(P[あ]4-8)よろず占い処 陰陽屋猫たたり (ポプラ文庫ピュアフル)(P[あ]4-8)よろず占い処 陰陽屋猫たたり (ポプラ文庫ピュアフル)感想
陰陽屋シリーズ第7弾。前作の終わりで三井さんにようやく告白したものの、あえなく撃沈し傷心の瞬太を待ち構えていたのは、夏休みの補修と2年生への進級をかけた追試。何とかハワイへの修学旅行に対する執念で乗り切って一安心。話の方は相変わらずゆっくりとしか進まず、最後の第4話に久しぶりに登場した葛城さんや謎の月村颯子の素性がわかったぐらいでようやくちょっと進展。本来ならば瞬太の出生の謎も気になるところではあるが、本作としては瞬太が無事にハワイへ行けるのか?無事に3年生に進級できるのか?の方が一大関心事かもしれない。
読了日:2月6日 著者:天野頌子

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