2014年4月の読書メーター

先月はStollySellerを3冊読んだおかげで短編ばかりだった気がしますが、満願、和菓子のアンなどが印象に残りました。他にも、話題のルーズヴェルトゲームや偉大なるしゅららぼん、星間商事社史編纂室なども面白かったです。しかし、光圀伝Kindle版はいったいいつになったら読み終わるのでしょうか・・・

2014年4月の読書メーター
読んだ本の数:14冊
読んだページ数:5673ページ
ナイス数:813ナイス

チア男子! ! (集英社文庫)チア男子! ! (集英社文庫)感想
直球ど真ん中のスポーツ青春ものです。いわゆるウォーターボーイズ的な、一般的には女性がやると思われているチアリーディングを素人だらけの男子チームが全国選手権を目指して奮闘する物語。って言うと非常にベタなんだけど朝井さんが書くと一味違う。一人ひとりの悩みや葛藤がとても生々しく描かれる。ただ、チームが16人編成なので、登場人物が多くてちょっと視点がばらけてしまった印象。そういう意味では映像向きなのかも。それでもラストのノートの回し読みと二分三十秒の疾走感、高揚感に引き込まれます。溝口とトンのコンビが最高でした。
読了日:4月29日 著者:朝井リョウ
Story Seller〈3〉 (新潮文庫)Story Seller〈3〉 (新潮文庫)感想
恒例の豪華作家陣による読み切り短編集。読む順番がアレだったため、米澤さんの「満願」は単行本の方で読了済。近藤さんの「ゴールよりもっと遠く」も同じく読了済。沢木さんと有川さんは今回はもう一つ合わなかったかな。湊さんは恐らく阪神大震災を経験されているんでしょうね。佐藤さんの数字にまつわる連作も全貌が分からないまま終了しちょっともやもや。今回始めて著作を読んださださんの「片恋」は、現実に起きた悲惨な事件が登場するだけに複雑だが、意外と軽やかな文体もあってストーカー物なのにこんなにも爽やかなラストシーンが印象的。
読了日:4月27日 著者:
満願満願感想
いずれもいわくのある死とそれを取り巻く人達に潜む想いを題材にした、夜警、死人宿、柘榴、万灯、関守、満願の6つの短編からなる黒いバージョンの米澤さんの短編集。時代設定が明確なのは万灯と満願だけですが、どれも昭和テイスト満載でどこか後ろ暗い感じの文体と合わせて重厚な雰囲気が醸し出されています。満願というタイトルにもかかわらず決して明るい話ではなく仄暗い読後感ですが、一見バラエティに富んだ内容と結末でありながら、どこかしら共通性を感じさせ、いずれも甲乙つけがたい非常に完成度の高い上質な短編集でした。
読了日:4月27日 著者:米澤穂信
星間商事株式会社社史編纂室 (ちくま文庫)星間商事株式会社社史編纂室 (ちくま文庫)感想
固そうなタイトルからは想像もつかない、三浦しをんさんのBL愛全開の本書。星間商事の社史編纂室といういかにも窓際職場を舞台に仕事の傍ら同人活動に勤しむ幸代達が、高度経済成長期の会社の歴史に潜む謎に迫ろうとするも旧専務派から邪魔が入る。闇に葬りさられようとする会社の正史を明らかにするべく本間課長が選んだ手段は同人誌として冬コミに裏社史を出版すること。作中内同人小説のおやじ受けBLとかレベルが高すぎてちょっと付いていけないものの、金田さんの解説により”やおい”の語源も知ることができて、少し成長したのであります!
読了日:4月26日 著者:三浦しをん
Story Seller annex (新潮文庫)Story Seller annex (新潮文庫)感想
お馴染みの人気作家による短編読切集の第4弾。近藤さんのトゥラーダはサヴァイヴに収録されているため既読でしたがそれ以外は初読み。強烈な印象だったのは有川さんの「二次元規制についてとある出版関係者たちの雑談」。著者を投影したかのような男性作家の過度な二次元規制に対するクラークの三原則をもじったような熱弁が面白い。「高度に発達したイマジネーションは、性的衝動を馴化する」言論規制を看過できない有川さんとはいえ萌えオタをそこまで擁護していただいて恐縮です(´;ω;`)あと、米澤さんの万灯の意外な展開が良かったです。
読了日:4月25日 著者:
和菓子のアン (光文社文庫)和菓子のアン (光文社文庫)感想
デパ地下の和菓子店「みつ屋」を舞台に、高校卒業後特にやりたいことも無いまま働き始めた杏子(アンちゃん)を主人公に、椿店長やイケメン乙女の立花さん、元ヤンの同僚桜井さんなどの個性的な登場人物と和菓子にまつわる謎とそこに隠された人々の様々な想いが詰まっている。ほんわかとした中にも鋭い観察力と感性を秘めたアンちゃんの雰囲気がとても良く、和菓子の奥深さを再認識させられるとともに、今や失われつつある気がするデパートの高級感と雑多感が合わさった非日常的な魅力も改めて感じます。読んでいて大きな福を感じる素敵な1冊です。
読了日:4月23日 著者:坂木司
光圀伝 電子特別版 (上) (角川書店単行本)光圀伝 電子特別版 (上) (角川書店単行本)感想
天地明察」にも登場した、我々が馴染みがある水戸黄門の姿とは全くイメージが異なる水戸光圀、この上巻ではそのはち切れんばかりのエネルギー持て余す10代の頃の姿を描く。豪放磊落、傾奇者で色を好み、思い上がっては兄の竹丸や沢庵和尚と宮本武蔵林羅山の次男の読耕斎に鼻っ柱をへし折られ、そうかと思えば詩作に傾倒し学問を修めることにも熱心である。不義の世子として自らの進むべき道に激しいまでに真摯に思い悩む姿がそこにはありました。それにしても、iPhone版のKindleではやはり画面が小さくて読みにくかったですね。
読了日:4月19日 著者:冲方丁
SOSの猿 (中公文庫)SOSの猿 (中公文庫)感想
家電量販店に勤めながら悪魔祓いの仕事もこなす二郎を語り手とした「私の話」と語り手不詳のまま五十嵐真を主人公として大仰に語られる因果の物語である「猿の話」が交互に繰り返される。西遊記エクソシストをモチーフにして語られる物語はなかなかに難易度が高くとっつきにくさを感じさせるが、ひきこもりの眞人少年を中心として最後には「五十嵐真の話」に収束していく。「あるキング」を彷彿とさせる不思議なお伽話のような印象。縦横無尽に飛び回る孫悟空狂言回しのような三蔵法師、それでいて物事の本質を突くような鋭い台詞に溢れている。
読了日:4月19日 著者:伊坂幸太郎
有川浩脚本集 もう一つのシアター! (メディアワークス文庫)有川浩脚本集 もう一つのシアター! (メディアワークス文庫)感想
小説ではありません。小説「シアター」をもとに、シアターフラッグとして実際に上演された舞台の脚本と裏話的な註で構成されています。非常に臨場感溢れた内容に、読んでいるとこの舞台を観たかったなぁという気分になります。千歳のモデルとなった沢城さんも出演しているが、何気に三匹のおっさんから祐希(演じているのは弟の沢城千春)もゲスト出演しており、有川ファンにはうれしい演出。そして、大和田さん演じる田沼先生がやはり肝であり、「全力を出しきっているのか!」という台詞やラストの生徒たちへ語り掛けるシーンが実に印象的。
読了日:4月14日 著者:有川浩
しゃばけ (新潮文庫)しゃばけ (新潮文庫)感想
舞台は江戸時代、廻船問屋長崎屋の跡取りで病弱な一太郎と、その若旦那を取り巻く妖たち、手代の佐助(犬神)と仁吉(白沢)、鈴彦姫にふらり火、家鳴や屏風のぞきが次から次へと登場し、冒頭からファンタジー好きをワクワクさせる。江戸の町で薬種屋を狙って次々に起こる謎の連続殺人事件と自らも狙われる事態に、自身の出生の謎を絡めて、意外と豪胆な所のある一太郎が解決に乗り出す。江戸の町の人情溢れる人間模様や、人とはズレているけれども個性的で妙に人間臭く感情豊かな妖達の魅力もあって、とても愉快な捕物帳でした。
読了日:4月13日 著者:畠中恵
Story Seller〈2〉 (新潮文庫)Story Seller〈2〉 (新潮文庫)感想
人気作家によるアンソロジー第二弾。初っ端の沢木耕太郎氏の貫禄に参りました。何気ないお酒の話をしているだけにみえて、そこに吉行淳之介さんとのエピソードが出てきたりする時点でもう降参です。決して旅好きな訳でも無いのですが、久しぶりに深夜特急を読みたくなりました。個人的に一番面白かったのは伊坂さんかな。どんだけ合コンに思い入れがあるのかと思うぐらい様々なシチュエーションを重ねていく技巧の上手さはお見事。近藤さんと本多さんは既読のものでしたが、やっぱり「日曜日のヤドカリ」に登場する弥生さんのキャラは素敵ですね。
読了日:4月12日 著者:
天国旅行 (新潮文庫)天国旅行 (新潮文庫)感想
心中や自死などの自ら選んだ死をテーマにした短編集。天国旅行というタイトルと表紙絵の雰囲気から想像していた内容とはかけ離れて非常に重たい内容。それにしても、読み終えた今、この本を読むのに最適な精神状態と環境とはいったいどのような状況なのだろうか?落ち込んだ時?前向きになりたい時?と考えてみるがなかなか答えが見つからない。裏表紙にある「すべての心に希望が灯る」の文句ほど全体を通して救いに満ちていたとはいえないが、それでも、いずれの短編も生きていくことと死ぬことの壮絶さを深く考えさせられる。
読了日:4月10日 著者:三浦しをん
偉大なる、しゅららぼん (集英社文庫)偉大なる、しゅららぼん (集英社文庫)感想
他人の心を操る能力を持つ日出家の十代目跡取りの淡十郎と分家の涼介、そして同じく時間を操る特殊な力を持つ棗家の広海。その力の源である琵琶湖湖畔の石走を舞台に、「湖の民」達の荒唐無稽で壮大かつ馬鹿馬鹿しく身勝手な争いが繰り広げられる。それでいて、これだけの頁数を読ませるのは、淡十郎や姉の清コングこと清子、パタ子さんなどの登場人物の魅力や日出家と棗家を琵琶湖から追い出そうと画策する校長の意外な黒幕の真相、ラストでほっこりさせると思いきや下品なオチと、これも万城目さんの”しゅららぼん”の力ですかね。
読了日:4月8日 著者:万城目学
ルーズヴェルト・ゲーム (講談社文庫)ルーズヴェルト・ゲーム (講談社文庫)感想
ドラマ化記念で読了。お得意の銀行ものではなく、青島製作所という中堅企業と企業スポーツである社会人野球を舞台にした作品。リーマンショック以降の急激な経済不況による業績悪化のあおりを受けて廃部の危機にさらされる野球部。それを救うべく一人の男が立ち上がる!なんていう単純なドラマではなく、池井戸作品らしく、ライバル企業との生き馬の目を抜くような競争のなか、企業と野球部の両方の存亡をかけた戦いが、社員一人ひとりの懸命な姿を通じて活き活きと描かれる。特に笹井さんの描き方が上手い。読みながら思わず熱が入ってしまう良作。
読了日:4月2日 著者:池井戸潤

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