2014年9月の読書メーター

9月は新刊の銀翼のイカロスのほか、真夜パン第4弾、ドラマ化を控えたNのために、福家警部補の報告、おやすみラフマニノフ、キケンなどが面白かったです。

 

2014年9月の読書メーター
読んだ本の数:14冊
読んだページ数:4514ページ
ナイス数:679ナイス

真夜中のパン屋さん 午前3時の眠り姫 (ポプラ文庫 日本文学)真夜中のパン屋さん 午前3時の眠り姫 (ポプラ文庫 日本文学)感想
真夜中にオープンする不思議なパン屋さんのシリーズ第四弾。人は誰しも何処かに暗い闇の部分を抱えているのに、ブランジェリーの暖かい雰囲気に少し油断していたみたい。のっけから希実の生易しくない過去を思い出させられ、突然現れた広島の従姉妹の沙耶がもたらした嵐は否応無くその封印されていた記憶を呼び覚ますきっかけとなった。希実の母の律子の奔放非道ぶりに辟易しながらも、希実を取り巻く弘基や斑目やソフィアさんたちの優しさが救い。真夜中に開店する理由も判明し、今回も読み応え十分でいよいよ物語も佳境。母との邂逅は如何に。
読了日:9月30日 著者:大沼紀子
キケン (新潮文庫)キケン (新潮文庫)感想
成南電気工科大学のサークル「機械制御研究部」、略称【キケン】。これがごく一般的な工科大学の姿なのかは文系にはわかりませんが、犯罪スレスレの実験、学祭のラーメン模擬店、恋愛など、とにかく楽しそうな学生生活のオンパレード。読みながらなぜ回顧形式で書いたのかが不思議でしたが、有川さんの後書きを読んで納得。これは、愛すべき馬鹿な男の子達の自慢話にも似た武勇伝を微笑みながら聞いてあげてね、という女子へのメッセージであり、思い出の居場所はいつまでも今に繋がってそこにあるよ、という男子へのエールでもあるんですね。
読了日:9月29日 著者:有川浩
Nのために (双葉文庫)Nのために (双葉文庫)感想
ドラマ化前に読了。マンションの一室で遺体で発見された野口貴弘・奈央子夫妻と、居合わせた杉下希美、西崎真人、成瀬慎司、安藤望。いずれも名にNのイニシャルを持つ。それぞれの証言から不倫の末の犯行として西崎が10年の刑を受けた。しかし、第2章以降にそれぞれの口から語られる事件の真相は全く異なるものであった。野口夫妻が殺された本当の理由とは?Nのためにとは誰なのか?神の視点を持つ読者だけがこの真実の中から多面的な立体パズルを構築することができる。でも登場人物たちが互いの想いをついぞ知ることはなく、それが切ない。
読了日:9月28日 著者:湊かなえ
福家警部補の報告 (創元クライム・クラブ)福家警部補の報告 (創元クライム・クラブ)感想
福家警部補を主人公とする倒叙ミステリシリーズ第三弾。2作目の感想に、「あとは名犯人の登場が待たれます」と書いた記憶がありますが、ついに本作の3話目「女神の微笑」にライバルと成り得る犯人として後藤夫妻が登場しました。ただ、本書で最も印象に残るのは第2話「少女の沈黙」。組の再興を目論む元構成員に誘拐された少女を救うべく罪を犯しながらも、組解散後の他の構成員たちの面倒を見るために捕まる訳にはいかない菅原兄貴と、あくまで仁義を貫きフェアに追い詰める福家警部補の争いは見ごたえ充分。そして結末は切なさに溢れている。
読了日:9月24日 著者:大倉崇裕
ストーリー・セラーストーリー・セラー感想
裏表のような二編の小説。Side:Aとなる一つ目は以前に短編集である「Story Seller」に掲載された、突然不治の病に侵された女性作家の物語。対して、Side:Bは作家の妻を持つ夫が病に倒れる話。いずれも、究極の選択を迫られた夫婦の強い絆を描いた物語。有川さんの文章からむき出しの感情がぶつかってくるようで受け止めるのにパワーが要ります。今回書き下ろされたBは自らの死に瀕した夫の想いがより鮮明だったためか、男性読者としてはより感情移入して読めて、こっちの方が好きですね。果たして、後書きはどこまで本当?
読了日:9月22日 著者:有川浩
よろず占い処 陰陽屋あらしの予感 (ポプラ文庫ピュアフル P[あ]4-6)よろず占い処 陰陽屋あらしの予感 (ポプラ文庫ピュアフル P[あ]4-6)感想
陰陽屋シリーズ第5巻。年越しの狐行列への参加を巡っての三井家の騒動から、瞬太の2年生進級危機の春までの4話。相変わらず、片思いの相手の三井さんには告白できず、三井さんの憧れの相手とはいったい誰?状態から抜け出せないまま年を越し、ドキドキのバレンタインデーも、谷中のばあちゃんの家の猫カフェ買収騒動に一役買っているうちに風邪で寝込んでしまって進展なし。「あらしの予感」と煽ったタイトルの割にはそろそろ、話を進めて欲しい気もするけど、そこはグッと我慢のほのぼの感が持ち味ということで、ゆっくりと見守りましょうか。
読了日:9月21日 著者:天野頌子
銀翼のイカロス銀翼のイカロス感想
半沢の今度の相手は破綻寸前の帝国航空、功名心にはやる新政権の白井大臣と、その命を受け再建を請け負うタスクフォース。裏には利権を貪る大物議員まで。旧Tと旧Sの対立は相変わらずで、敵の姿もどんどん大きくなる一方ですが、全く怯むこと無く変わらない半沢の姿に勇気づけられます。渡真利や近藤の登場はお約束ですが、何より地下迷宮の主の如き検査部の闇の特命担当トミさんこと富岡が頼りになりすぎてチート状態。その他にも中野渡頭取や黒崎検査官など見所満載。あと、開発投資銀行の谷川次長の話はスピンオフで詳しく読んでみたい。
読了日:9月20日 著者:池井戸潤
夜の国のクーパー夜の国のクーパー感想
現実と非現実の狭間のどこか不思議なファンタジー。妻に浮気された公務員の主人公が辿り着いたのは鉄国との戦争に負けた”この国”。猫のトム君が語るのは、大きな杉の化け物の”クーパー”や、複眼隊長に選ばれ、クーパーを倒して透明になるというクーパーの戦士の話、そして戦争や争いという避けようのない欲望と衝動。人間と猫、猫と鼠という対比を通して世界の成り立ちや秘密といった本質を描き出す。忙しかったせいもあるけど、読了に1週間まるまるかかってしまった。ちょっと冗長すぎてトム君のように欠伸が出てしまった気もするかな。
読了日:9月20日 著者:伊坂幸太郎
よろず占い処 陰陽屋アルバイト募集 (ポプラ文庫ピュアフル P[あ]4-4)よろず占い処 陰陽屋アルバイト募集 (ポプラ文庫ピュアフル P[あ]4-4)感想
陰陽屋シリーズ第4弾。今回、よろず占い処に持ち込まれる依頼は、倉橋女史の双子の兄からの恋愛相談、かつて祥明がナンバーワンを務めたホストクラブの同僚たちの人探し、ラーメンが美味しいお馴染みの上海亭の江美子さんからはグルメサイトでの誹謗中傷、そして幼馴染の槙原から庭に呪詛の品々を埋められているという相談の4件。特別なことが起こるわけではなく、瞬太と三井さんの仲が劇的に進展するわけではないのだけど何故か気になるのは、多分、息子が可愛くて仕方が無い吾郎とみどりと同じような保護者視点になってしまっているからかも。
読了日:9月13日 著者:天野頌子
銀行仕置人 (双葉文庫)銀行仕置人 (双葉文庫)感想
巨額融資を巡り陥れられた融資部エースの黒部次長が、人事部付の座敷牢のような隔離部屋から、銀行内部の腐敗を追及していく物語。結構初期の作品ながら今の鉄板の黄金パターンが確立されています。黒部が罠に嵌められる経緯と、復讐の動機、英人事部長から闇の指令を受けて臨店指導を装って影から追及していく様子などがストレートに描かれているため、非常に分かり易くて読みやすい。もちろん、最後は勧善懲悪で痛快なところも○。あと、池井戸作品に出てくる女性キャラは皆優秀ですね。本作では、後の花咲舞を彷彿させるような川嶋有理が魅力的。
読了日:9月12日 著者:池井戸潤
ガンコロリンガンコロリン感想
医療問題にまつわる五つの短編集。全体としては医療問題を共通テーマとして、ガンの特効薬の開発による外科医の絶滅やTPPによる医療の自由化の先にある病院のランク付けなど、現代の医療への認識に対する風刺と著者の皮肉たっぷりの警鐘を込めたショートショートといったところ。その反面、ノルガ王国に渡った渡海が登場する「緑剝樹の下で」と津波被害を受けた被災地へDMATの一員として駆けつける速水を描いた「被災地の空へ」は、ファンには嬉しいところだが短編集としては完全に毛色が違い過ぎて纏まりを欠いた印象が否めない。
読了日:9月11日 著者:海堂尊
おやすみラフマニノフ (宝島社文庫)おやすみラフマニノフ (宝島社文庫)感想
今回も探偵役に指揮者まで岬先生大活躍です。相変わらず、著者が全く楽器が弾けないとは想像もできないくらいの迫力と疾走感、読んでいて高揚感を感じさせる演奏シーンの描写に圧倒されます。そして何より音大に通う音大生達が音楽家として行き続けて行くことの苦悩と葛藤が生々しく描かれている。密室から消えたストラディバリウスのチェロの盗難事件、学長のスタインウェイの破壊と音楽会の殺害予告などのミステリーであるところの本筋が霞んでしまうのはご愛嬌でしょうか。殺伐とした避難所での城戸晶と岬洋介の演奏シーンは鳥肌ものです。
読了日:9月6日 著者:中山七里
死亡フラグが立ちました! ~カレーde人類滅亡!? 殺人事件 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)死亡フラグが立ちました! ~カレーde人類滅亡!? 殺人事件 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)感想
しまった。間違えてこちらから読んでしまった。本宮先輩がノストラダムスの予言から世界を救った話や死神との因縁が前作を読んでいないためわからなくて非常に残念。あらすじを書く類の話ではないですが、魔女のアベーユの血を引くカバラ会と呪いのビデオなどの荒唐無稽で徹底的に馬鹿馬鹿しい設定と、やたら人が死ぬ不謹慎極まりない内容ですが、本宮先輩のダイハードばりの活躍が見所なんですかね。それにしても、魔女の正体には驚かされました。肝心のカレーのくだりは必要なんだか、本当に何でもありっていうか楽しんだもの勝ちのような感じ。
読了日:9月2日 著者:七尾与史
【文庫】 その時までサヨナラ (文芸社文庫)【文庫】 その時までサヨナラ (文芸社文庫)感想
10年ぐらい前に「リアル鬼ごっこ」を読んだ時の悪い意味での衝撃が忘れられず、以来著者の作品からは遠ざかっていましたが、久しぶりに手にとってみました。流石にあれから長く人気作家として作品を出し続けられているせいか、随分と読み易く感じました(失礼?)。仕事人間で家庭を省みることのなかった男が、震災事故で妻を亡くしたことをきっかけに、突然押しかけてきた謎の女性と共に4歳の息子との生活に向き合うという、意外なことにホラー作品ではなくほんわかとした作品でしたが、ラストにかけてのオチは容易に予想できてしまいましたね。
読了日:9月1日 著者:山田悠介

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